:XDay +30"アルキダシタキモチ" 
 
 
Cross Point








「ルシーダの意識が、回復したって?!」

ボクの驚きぶりに、キソヴィはやれやれと苦笑いして応えた。

「まぁ、そう慌てなさんなって。
 …やっぱエミさんとあの子姉妹だな、反応がそっくりだ。
 回復はしたんだが検査やらなにやらで、会えるようになるのは数日後らしい。
 …大丈夫、意識はしっかりしててピンシャンしてるよ。それに、エミさんもまだまだやる事満載だろう?」
「まぁ、そうなんだけど…、そっ…か」
「ん?嬉しくなさそうだな?」
「ぁ…いや、そんな事無いよ」

キソヴィの連絡を受けて、ボクは…正直、ちょっと複雑な気分になっていた。
この間ケイさんに話した事は本心だけれど。
…その時言われた懸念は、やっぱりボクの中に残っていたわけで。

「ルシーダは…ボクの事許してくれるのかな?」
「ん?」

ここ数日、経緯説明の為の資料を作成する傍ら、統合調査部権限で参照したかなり詳しい彼女の経歴は…正直現実としてボクが受け入れるにはキツいものだった。

「同じ顔で、ほぼ同じ血が流れてるのに。生きてきた世界は、こんなにも違ってて…」

ボクとの違いは、ただ一点だけ。

(彼女が、強化体だったという事)

資料によれば、体の弱かったルシーダは…幼い頃に一度亡くなっていた。
それを嘆いた、ボクらの本当の両親が生み出したのが…彼女だったのだ。

(命を無理矢理繋がれて、ルシーダは…。
 ボクだったら…、きっと自分を保てないよ)

考え込んでいたボクの頭を、キソヴィの暖かくて大きな手がわしわしと撫で、あれから若干延びた髪がモミクチャになる。

「な、なにすんのさ!?」
「エミさん、心配してるのはどっちだ?妹さんの事か、それとも…?」
「い、妹の事だよ…」

どこかムスっとしながら、ボクは答えた。
どこも間違っちゃいない、けど。
釈然としないこのモヤモヤは何だろう。

「あの子は…大丈夫、エミさんの味方になってくれるさ。俺が保証する」

黒い鉄面皮の装甲に、イタズラっぽい笑みが浮かんでるように見える。
なんか、背中を押されたのが、なんだか嬉しいようで…悔しかった。

「何か賭ける?」
「また唐突だな、何でも良いぞ?即座にダブルアップさせて貰うが[゜Д゜]」
「それじゃ賭けになんないよ…」

肩を竦めようとして右肩の痛みに顔をひきつらせたボクに、彼は小さくため息をつく。

「慣れない事するからだっての…ま、それだけ確実だって事さ。
 それに今回の件は、何もエミさんが悪い訳じゃないだろ。気に病んでたら、体持たねぇぞ?」
「…」

彼にそこまで見透かされてしまっては…ボクには、返す言葉は見つからなかった。