真っ白になったまま暫くして。
「ほれ、着いたぞ?」
「ぁ、え…わ、分かってるよッ!」
呆けていたのを誤魔化そうとして、慌てて左手で扉を開こうとしてよろけたりしながら、ボクは久しぶりの実家の玄関の前に立った。
なんか、懐かしいような、恥ずかしいような…。
「ただいまー、っと」
「た、ただいま…」
「あ、お帰り」
「お帰り、エミ姉!」
ウィルが家の玄関の扉を開くと、出かける直前だったらしいアム姉とサフランが靴を履いていた。
「ど、どうしたのさ?!こんな時間に慌てて…」
なんかえらく急いでる風だけど…?
「私は上司がヘボやらかしたらしくて、それの手伝いよ。
サフランは…」
「私は追ってたヤマが動きそうだってPB隊長から連絡が入ってね…」
「…今夜は帰れそうなのか、二人とも?」
少し慌てた表情で問うウィル兄に、二人は残念そうに首を振った。
特にサフランは、腕によりをかけて料理を頑張るって息巻いてただけに…銀髪に隠れた垂れ耳をさらに垂れさせてしょんぼりとしていた。
アム姉とサフランの料理は美味しいから、ボクも楽しみにしてたんだけど。
仕事じゃ、仕方ないよね…。
「そうか、急な呼び出しじゃ仕方ないな…。明日は、帰れるんだろ?」
「昼頃までには帰れると思うよ?」
「私もそれ位にはケリつけておきたいな。折角色々仕込んでたのにぃ…」
「ねぇ?」
二人同時にため息をつく。
外見こそ似ていないけれど、仕草はそっくりで。
なんとなくその雰囲気が可笑しくて…ボクは微笑んだ。
「お姉ちゃん、なーにニヤニヤしてるのかな?」
「えっ、な、なんでもないよっ?!」
「あぁ、なんでもないぞ?」
「二人して、あーやしーぃ…」
「ほらほら、そんな事言ってる場合じゃないでしょサフラン!行くわよ!!」
「そうだった…行ってきまーす!」
サフランの背中を押して、アム姉がボクらに小さく微笑んで、ウインクしたように見えた。
ひょっとして…アム姉は全て分かってたのかもしれない。
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