:XDay+45 スタート・ライン 
 
 
Cross Point






「それで、ルシーダはいつ頃まで入院なの?」

墓参りを終えて、公園から帰る道すがら。
目覚めてからは回復も早く順調だとは聞いていたけど、本人の口から直接聞きたくて、ボクは彼女に問うていた。

「うん…。
 ほぼ大丈夫らしいんだけど…以前使ってた薬品とかの影響もあって、もう暫くは安静にしてろってさ」
「身体、鈍っちゃうよね?」
「そうだね…エミとの勝負も、付いてないし」
「…ッ!」

つい身構えてしまったボクに、あぁ、とルシーダは苦笑いを浮かべる。

「あの時の約束。
 僕のリハビリだと思って、今度模擬戦闘につきあって欲しいんだ。それと…」

珍しく、言いにくそうにするルシーダ。

「…それと?」
「ちょっと、賭をしない?」
「賭?」
「僕が勝ったら…僕が一番大事なものを、一度だけ僕の物にしたい」
「…うん」
「君が勝ったら…そうだな、何がいい?」
「…人命に関わるものとか、そういうのじゃないよね?」
「うん。そういう事で断じてないよ」
「じゃぁ…ルシーダと買い物がいいかな?」
「買い物?」

ルシーダはきょとんとした表情で聞いてくる。
なんだか、昔の自分を見るみたいな、そんな感覚だ。

「そ。必要な物って色々あるんだよ、女の子ってのは」
「なんか、エミ…前に会った時と比べて、変わったね」
「そう?」

そいえば、こういう事強く意識するようになったのはウィルと想いを確かめあった時からだろうか。

「うん、なんかこう…可愛くなった」
「そ、そんな事無いよ?!」

面と向かって真面目な顔でそう言われるとは思ってもみなくて、完全な不意打ちに頬が熱くなる。

「と、とりあえずいつにするの!?」
「そうだね…2週間後に」
「おっけ、だからその話は無し!」
「…そんなぁ」

そして、この時安請け合いした返事が、後々あんな事になるなんて、ボクはその時思ってもみなかったわけで…。