「はふ…なにやってんだろ」
さっきの気合いはどこへやら。
帰ってみたら居るのはウィル兄だけで。今夜は…二人っきりらしい。
その事実を強く意識しすぎて…どこかぎくしゃくとしながら、ボクはキッチンに立っていた。
彼の夜食を作りながら、目の前の惨状を見てボクはため息を吐く。
ニューマンは手先が器用だとよく言われるけれど。
今まな板の上に乗っている野菜は…どう控えめに見ても不揃いで。
コルトバヌードルの具として入れるには…ちょっと大きすぎるよね、これは…。
ルームメイトのノラや、友人のクレール、アム姉やサフランも手早く器用に、さらに美味しそうに作ってしまうのだけど…。
それこそ、古の魔法を使ってでもいるのだろうか。
「あぃたっ?!」
ぼぅっとしていたせいか、指先を切ってしまった。
反射的に指をくわえて、やれやれと苦笑い。
何とか味と見てくれを整えて、ウィル兄の部屋へ持っていくことにした。
☆
「ん、ご馳走様。今日は旨く出来たな?w」
「もぅ…」
誉めてくれるのは嬉しいのだけど、頭を撫でられるのは…正直好きじゃない。
いつからそう思うようになったかは、分からない。
でも、いつの間にかボクの心の中にあった思い。
それは…子供扱いされるのが嫌だから?
それとも、妹扱いされるのが嫌だから?
言ってしまいたい。
妹扱いしないでくれって。一人の女として見て欲しいって。
聞いてみたい。
ウィル兄がどうボクを思ってるのか、って。
(言えるわけないし、聞けるわけ…ないよね)
喉元まで出かかった言葉を、必死に飲み込んで。
調べものをすると彼に言って、ボクは席を立った。
|