![]() :XDay -2h00m "ウゴキダスジカン" |
||
Cross Point
|
「…」 データが全部コピーされたことを確認して、はやる気持ちを抑えて検索キーを入力し、Enterキーを押す。 ―該当、1件。 「やっぱり、85年、か…」 恐る恐る、1ページずつ目を通す。 ―遺伝子界の権威、失踪― 大きな見出しと…紅い壁紙の写真―。 「…ぁ」 唐突に…本当に唐突に記憶が、鮮明に脳裏に蘇っていく。 「…ぁ…あぁ…」 紅い部屋。 「…ぃ…ゃ…いや…ぁ」 「あの時」の恐怖と、痛みが全てぶり返す。 「ぃ…やぁ…」 ボクは。 「いやぁぁああぁぁあぁぁああああっ!!?」 全てを、思い出していた。 「やだ、やぁっ?!いやあぁああっ!!」 どんなことをしても、あの時の恐怖からは逃げられない。 こんな…こんな苦しい思いをするのなら、思い出さない方がよかった、と。 (逃げられ…ない) やがて、追い詰められたボクの胸中に沸き上がった感情。 (全部…無くなっちゃえ…そう、全部無くなっちゃえ!) 純粋な、破壊の衝動。 「エミーナ!」 誰かに腕を捕まれ、止められる。 「…すまんっ」 抱きとめられ、唇に暖かい感覚。 「…ぃる、兄」 最愛の、人、だった。
|