1st Night
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―惑星コーラル 某国首都 スラム街―
―空はいつもと変わらない鈍色で、酸性雨が降り続いていた―

蛋白質の焦げるいやな臭いと共に最後まで立っていた人間が雨に打たれた泥人形よろしく崩れ落ちた。

「…洒落にならんな。こんな所で命の取り合いとはな…。」

 ガレス=オークニーは呼吸を整えると、廃ビルの入り口に雨宿りをするべく、歩き出した。
ふと、廃ビルの割れた窓ガラスに写った自分の顔についている血糊に気づき、手で無造作に血糊を払った。
血糊の落ちた地面には先程の戦闘で有象無象に成り下がった人間やニューマン、アンドロイドだったものが無造作に転がっている。そのうちの一つ―多分、人間の物だろう―の半分焼き焦げた顔の左眼と目線が合ってしまい、首をすくめるガレス。

「…だから、やる前に言ったろう?"俺は戦いたくない"って。」

 廃ビルの入り口に入る前にデンタルミラーを取り出して廃ビルの入り口から中を確認する。
目視できる範囲での危険は―ない―今の所は。

「…さて、と。少し休むか。」

 右手には拳銃の中でも比較的高威力で扱いやすい名銃―ヴァリスタ―を握り、左にはポケットからだしたデイフルイドのパックを取り出し、廃ビルの中に入った。今度は自分の五感をフルに使って、周囲に危険が無いのを確認すると、デイフルイドのパックを一気に飲み干す。荒れていた呼吸が落ち着き、先程から続いていた偏頭痛が治まる。

「…ふうっ。テクニックは便利だが、代償がきついな。」

 スラム街の事だけあって、警察のサイレンの音も聞こえず、地回りのチンピラもやって来る様子も無く、一息つける状態である事を確認すると、この仕事を受けた経緯をゆっくりと邂逅した。
 


 
 
1st Night
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