ファイル3:変革/Trans
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「ちょっとは落ち着いた? 通信関係の整備不良かもしれないし、そこまで過保護にならなくてもいいと思うよ」 エミナさんは頷いて紅茶に口をつける。 「サフランちゃんのキャンプシップの件もそうだけど、ゲート一時閉鎖なんてとんでもない異常事態だなぁ」 「あれ? ごろーちゃん知らなかったのか。2日前から夜間は閉鎖になったぜ」 もしかして知らないのは僕とエミナさんだけだろうか? そう思い皆の顔を見る。 「あたし知らなかった」「私もです!」「わしもじゃ」「俺も知らねえ!」「いうまでもなくボクも……」 「ふーむ。ま、皆最近は任務にいってないしな。ちなみに理由は整備員のストライキ。あいつらの要求はアークスの規模縮小らしい」 「規模縮小?」 「なんでわざわざ戦いに赴くんだー。そんなことより格差を無くせー」 棒読みするオタさん。ありありとその光景が目に浮かぶ。
「……ありがと、チャコ姐。でも、一体どうしたらいいんだろ? 夜間がダメっていうなら、朝まで待つしかないのかな」 現実的な線で言えば協力してくれそうな整備員を探してキャンプシップを出してもらうってところだろうか? 「なぁなぁ! チームルームを使えばいいんじゃないか?」 「そう言えば今わたしたちのチームルームってオラクル船団から出ていきっぱなしでしたっけ」 「うむ、開拓巡航中のはずじゃ。アレは確か、5年以上無補給での航海が可能なんじゃろ?」 つくねの言う通り、僕らのチームルームは開拓巡航/フロンティア・クルージングと呼ばれる機動中だ。 ともかく、キャンプシップよりよほど巨大な船を僕らは持っていたわけだ。 「「よし、いこう!」」 飛び上がって。エミナさんが一目散にテレポーターに駆け込んだ。
天井から吊るされた3機のモニターをチェックすると、航路図が展開されていた。
「確かボスはトゥリアに聞いたって言ってたのじゃ。マネージャー以上の権限のある者であれば決定権があるじゃろ」 僕の質問につくねが答えた。 「よーし! トゥリアきこえてるぅー!?」 「……そんなに煩くしないでも、聞こえてるわよ……」 いつも通りのダウナーな声でトゥリアが返答した。 「じゃあ、トゥリア。これから鯖味噌の妹を助けにいくからチームルーム、もとい宇宙船(仮)号を発進させてほしいの」 「……なら、行きたい場所を指定して……ついでに音頭もとって……めんどいから……」 「おっけー! 目標は惑星アムドゥスキア周回軌道! 宇宙船(仮)号発進せよ!」 「………あいあいまむ………」 雄々しい宣言に対し、トゥリアは変わらず間延びした声で応じた。 まず、現在位置の座標がセーブされる。首尾よく任務が終了したらここに帰ってくるためだ。 「……ゲート、展開するよ。……総員テレポート酔いに注意してね……」 トゥリアのオペレートはゆっくりすぎる。
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