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ファイル3:変革/Trans










「なるほどね。私は最近ずっとオラクルに戻っていなかったが、そんなことになっていたのか」

「アキさんは絶対令の日もいなかったの?」

「いなかったが、その日のことは助手から詳しく聞いていてね。その日を境に研究室が完全に解体されたと」

言葉から察するに喜ばしいことじゃないのだろうが、アキの顔は晴れやかだ。

「そうだ、サフラン君。幸いにもここは定期的に助手の船が来ているんだ。君もその船で帰るといい」

「ホント!? よかったぁ。でもあたし、キャンプシップ壊しちゃったから帰りづらいなぁ」

〔だいじょーぶだ〕〔サフラン〕〔形あるモノ〕〔いつか壊れる〕〔気に病んじゃ〕〔ダメ〕

「ふふっ、コ・レラは優しいね」

サフランははにかみながらコ・レラの首の辺りを撫でた。きっと硬いのだろうと思っていたが、結晶質以外の箇所は意外と柔らかい。
手のひらで触れると、奥にさらさら流れる血と体温、そしてしなやかな筋肉の脈動が伝わってくる。
思わず感嘆の溜息が漏れる。

「おお……」

〔サフラン〕〔そこくすぐったい〕

「ふむ、気に入られたみたいじゃないか。私にもそんなところ触らせたことは無いよ」

「えっ! ここひょっとしてデリケートな場所なの?」

〔逆鱗は〕〔もう少し下だから大丈夫〕〔でもアキは〕〔なんか怖いからヤ〕

龍の逆鱗とかいう話は聞いたことがあるが、龍族にもあるとは知らなかった。
アキが怖いというのは研究者特有の好奇心と無遠慮さに起因するものだろう。しかし、自分なら良いという理由もよくわからなかった。

「えっと、レラはあたしがデューマンだから仲良くしてくれてるの?」

〔それも〕〔ある〕〔サフランは〕〔あの哀しい龍の同胞だ〕〔でも私が〕〔サフランを〕〔好きなことはそれとはあんまり関係ない〕

「えっえっ」

好きなどと口で言われたことは無いサフランにとって、その言葉は真っ白になるのに足るものだった。
しかし、クォーツドラゴンにとって人間の細かい挙動は分からない。だからコ・レラはそのまま続ける。

〔サフランは〕〔ちゃんと私の挨拶に〕〔はじめまして〕〔よろしく〕〔と返してくれた!〕〔それが嬉しかった!〕

「おかしいな。私もいつもそう言ってるんだけどな」

〔アキは〕〔純粋じゃないから……〕

「純粋。ピュアという概念を君らは持っているんだね。ふむ、とても興味深いよ」

コ・レラとアキの話を聞きながら、サフランは自分の中で何かが変わっていくのを感じていた。
デューマンであることとか、龍族に対する気持ちだとか、アークスのこと、友達って何ってこと、お姉のこと。
全部が繋がって変わっていく。
だから、もっと色々と知りたいと思った。デューマンのことも。龍族のことも。

「ねえアキさん。造られた龍って何? デューマンと何か関係があるの? なんでここで暴れているの?」

 

 

 

 

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