ファイル3:変革/Trans
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「アキさんは絶対令の日もいなかったの?」 「いなかったが、その日のことは助手から詳しく聞いていてね。その日を境に研究室が完全に解体されたと」 言葉から察するに喜ばしいことじゃないのだろうが、アキの顔は晴れやかだ。 「そうだ、サフラン君。幸いにもここは定期的に助手の船が来ているんだ。君もその船で帰るといい」 「ホント!? よかったぁ。でもあたし、キャンプシップ壊しちゃったから帰りづらいなぁ」 〔だいじょーぶだ〕〔サフラン〕〔形あるモノ〕〔いつか壊れる〕〔気に病んじゃ〕〔ダメ〕 「ふふっ、コ・レラは優しいね」 サフランははにかみながらコ・レラの首の辺りを撫でた。きっと硬いのだろうと思っていたが、結晶質以外の箇所は意外と柔らかい。 「おお……」 〔サフラン〕〔そこくすぐったい〕 「ふむ、気に入られたみたいじゃないか。私にもそんなところ触らせたことは無いよ」 「えっ! ここひょっとしてデリケートな場所なの?」 〔逆鱗は〕〔もう少し下だから大丈夫〕〔でもアキは〕〔なんか怖いからヤ〕 龍の逆鱗とかいう話は聞いたことがあるが、龍族にもあるとは知らなかった。 「えっと、レラはあたしがデューマンだから仲良くしてくれてるの?」 〔それも〕〔ある〕〔サフランは〕〔あの哀しい龍の同胞だ〕〔でも私が〕〔サフランを〕〔好きなことはそれとはあんまり関係ない〕 「えっえっ」 好きなどと口で言われたことは無いサフランにとって、その言葉は真っ白になるのに足るものだった。 〔サフランは〕〔ちゃんと私の挨拶に〕〔はじめまして〕〔よろしく〕〔と返してくれた!〕〔それが嬉しかった!〕 「おかしいな。私もいつもそう言ってるんだけどな」 〔アキは〕〔純粋じゃないから……〕 「純粋。ピュアという概念を君らは持っているんだね。ふむ、とても興味深いよ」 コ・レラとアキの話を聞きながら、サフランは自分の中で何かが変わっていくのを感じていた。 「ねえアキさん。造られた龍って何? デューマンと何か関係があるの? なんでここで暴れているの?」
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