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ファイル3:変革/Trans









「おい、ゼンチ! 何が出来てるって!?」

「【呼び声】という生体器官さ。ダーカーの習性を利用して、咆哮をすると呼び寄せることができる。リバーあそこを見てみろ」

示されたのは(仮)号の斜め前方だ。そこには白い龍がいた。
痩せこけた皮膚、骨だけのような躰、血走った目、胸部には青白い臓器が見え隠れしている。
僕はその龍を知っている。

「ハドレット? いや、別の造龍か!」

ハドレットならば角に金の輪を付けている。なにより、クーナに看取られ死んでいる。
クロームドラゴン/造龍は目撃報告こそ少ないが、稀に探査区域に現れ原生生物やアークスを蹂躙するのだ。
おそらくはハドレットのクローンなのだろう。

そいつはこちらをジッと見ている。いや、睨んでいる。アークスが憎いらしい。
ひょっとしたら、ゼンチに気付いているのかもしれない。

一歩、二歩、後退し、尾部を持ち上げた。尻尾が反り返りサソリのように見える。
造龍はあの体勢から高出力のエネルギーをレーザーのように口から照射できる。
だが、あれはなにか違う。刹那、悪寒が走った。

「クラウチングスタートだっ!」

あろうことか、そいつは駆けだした。四本の脚を不恰好にバタつかせて走る。
しかし速い。脚が長いのだ。
浮遊大陸の島をあっというまに横断し、跳躍し、天空に浮かぶ小島から小島へ、口から強酸性の涎を振り撒きながら、ファングパンサーのように駆ける。

「うわぁ、なんだアレ。何してんの?」

「なあ、オタさん。俺、あいつ来ると思うぜ」

「いや、無理だって先輩! いくらなんでもここまではこれねーよ!」

「あたしも来ると思うわ……」

「チャコまで!? だって(仮)号は200kmだし、空だって飛んでるじゃん!」

造龍の速度を目測で図る。あれだけの巨体が犬だの猫だののように走っているにも関わらずまるで速度が下がらない。
たぶん、時速200kmは超える。
だが、そろそろ浮遊大陸の島が切れる頃合いだ。火山地帯と浮遊大陸地帯の間のスポットで撒けるんじゃないか?

〔GUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!〕

だが、造龍はそんな些末なことを気にしない。島が切れた。跳躍。次の小島はないにも関わらず、身を投げうつ。

「正気かあやつ! 死ぬぞ!」

もしも(仮)号と造龍の間に島がもう一個でもあったなら追いつかれていただろう。しかし、そんなもしもは無い。
造龍は奈落へと吸い込まれ―――。

「嘘だろ……」

召喚した自身と同質量のダーカー:ゼッシュレイダを足場にして再度跳ねた。
前脚が振り上げられる。
(仮)号に衝撃が走った。

 

 

 

 

 

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