転送ゲートを通ってギルド支部から同じく衛星軌道上にあるターミナルコロニー兼ギルド総本部でもある"プリメーラ"へと一旦移動した彼らは、メイト系、フルイド系の回復薬を購入したり、自分の装備を預かり窓口から受け取った上で今回の"戦場"へと足を運ぶ。
久しぶりにフル装備に戻ったイー・フリーナは、追加外装甲にパワー・防御系マグとして育てているスーリヤを背負っている。色が外装甲とほとんど同じなので、マグが背中に装備されたブースターの様に見え、儚げな感じが薄れて全体的に非常に力強いシルエットになっている。標準装備のダークレーザーに、腰のハードポイントにはアンティークモデル、ヤスミノコフ2000H(ハンドガン系銃器の一種。実弾を使う今時非常にレアな銃)がロックされているのがご愛敬。
ちなみにウィルはパワーマグ仕様で愛用しているソニチ、背中にラストサバイバー、右腰にはヴァリスタを装備。
アムはパワー・マインド系マグとして育てているバーナ、武器にはテクニックが苦手な関係でバトルバージとレールガン(それぞれ杖系・ハンドガン系の一種)を持つ、格闘フォマールといった雰囲気だ。
そして、夕暮れの惑星コーラルの通称"秘境の森"奥深く。
スモッグが蔓延している都市中心部では空気汚染が進行してしまっている為、マスクを常に所持しなければならない程だ。それに比べればここは天国のような場所だろう。まさに最後の秘境と言える。
空気中の微粒子によって太陽光線が屈折され、常に紅い空の下。
衛星軌道上から打ち込まれた転送ポッドの光が一際輝きを増し、3つの人影が現れた。
ウィル達一行である。
「っと、到着〜」
「ウィル兄ってば仕事を請け負ってる時もマイペースだよね…」
「いつも平常心である事は大切なんだぞ。いざというとき反応できないからね」
「お二方とも、黙って!
前方25mに生物の熱源反応あり。5、8…かなり多いですよ。大きさは…推定体長…7m?!
コーラルにこんな大型生物は存在しません!」
普段からのほほんとしているウィルと、それに引きずられているアムの会話に、イー・フリーナの声が待ったを掛けた。
何かを見つけたらしい。途端に緊迫した空気が張り詰める3人。
「距離を少しづつ縮めてきてます。
相手をS(シエラ)1からS9と認定、戦闘モードに移行。
全センサーアクティブに。全身の電荷戦闘レベルへ。ダークレーザ、セイフティロック解除」
「え、えぇっ?!いきなり?」
「やれやれ。どうやら俺達は敵さんの真正面に立っちまったようだな。いくぞ、アムっ!」
「あ、うんっ!」
敵ではない可能性もあるが、様子を見るよりも行動を起こし、少しでも有利な情報を得る。
これが彼の基本理念である。
飛び出していくウィルに負けじと、アムも走りながら呪文詠唱の準備に入る。
「!っ、なんだこいつらは?!」
「熊、かなぁ?」
茂みから飛び出した2人が見たものは、大型哺乳類のようなものだった。
ようなものだった、というのはその生物が今まで見た事もない姿を持っていたからだ。
アムの言葉も、憶測に過ぎない。
「危ないっ!」
遅れて出てきたイー・フリーナの言葉に慌てて首を引っ込めるアム。
動物、というより怪物の腕が彼女の頭があった部分を薙ぐ。もう少し遅れていれば彼女の首が飛んでいたところだ。
予想以上に、いや、体型から予測もつかないほどに動きが速い。
「こうなったら撃退するしかないか。アム、イフィ、準備はいいか?」
「うん。しかた…ないよね…」
「こちらも準備OKです」
「3カウントで飛び出すぞ。…3、2、1、GOっ!!」
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