言うが早いか本来両手持ちの武器であるラストサバイバーを片手持ちして、怪物達に切りかかるウィル。巧みに相手の死角になる所から斬撃を繰り返す。
もちろん大したダメージは与えられていないが、怪物達が攻撃対象を彼に向けた。
殺気を一身に受けるものの慌てるどころかニヤリ、と笑みを浮かべるウィル。それこそ、彼が望んだ事だったのだ。
「今だ、アムッ!」
声を掛けると同時にウィルは大きく後ろへ飛びすさる。
怪物がそれを追おうとするが、その前には既にテクニックの展開準備を終えていたアムがいた。
「ごめんなさいっ!ギフォイエッ!!」
アムの放った炎の魔法が爆発的に広がり、怪物達の身体を焼く。悲鳴を上げる怪物達。
その一瞬の隙を逃さず、後方からイー・フリーナのヤスミノコフの強装弾とダークレーザとが彼らの身体に突き刺さる。
そして数分間の激闘の末―――。
ようやく最後の怪物が、重い音と共に大地に倒れ伏した。
「…うまくいったな…やれやれ。いきなりこれだと先が思いやられるよ…」
「うーん、そうですねぇ。
そもそもコーラルでは問答無用で襲ってくるような危険動物は居なかったはずなんですが…」
怪物のサンプルを採取しながら首をひねるイー・フリーナ。
実際のところ、彼らが住んでいる惑星コーラルはそれほど危険な動物は発見されていなかった。
危害さえ加えなければ温厚な生物達なのだ。
「……あの動物達……感情が見えなかった…。
本来なら…目を見れば…怒ってたり怯えてたりっていうのが分かるはずなんだけど……」
「……気づいてたか。
俺も違和感があったんだけど…。
普通自分の怪我がひどくなったり、形勢が不利だと分かれば逃げ出すだろう?
しかし、彼らはそんな素振りは最期までまったく見せなかった。なんだか…まるで『何かに操られている』ように…」
「…やっぱり…」
「…ん、何か分かったかい、イフィ?」
イー・フリーナの声が重いのに気付き、聞いてからふと眉をひそめるウィル。
「分かった、なんてものじゃありませんよ…これは。
…少なくとも…私が情報として持っている遺伝子サンプルには…この動物は含まれません。
明らかに遺伝子操作された形跡があります…。それも、この体格からして…戦闘用のものと思われます」
「!?っ」
あまりの事に言葉を失うアム。
そしてその瞬間、ウィルが一瞬だけ表情を歪ませたのをアムは見た。
恐れているような、それでいて怒っているような表情。
「…やはり…生体兵器か…。
大学の論文で読んだ事がある。最も、危険だと異端扱いされてすぐに消えたけどね。
よりにもよってこんな所でそんなもんに出くわすとは……。今回の"敵"ってのはかなりヤバイな」
「えぇ…」
「……それって…命を弄んでるって事じゃない……。許せないよ…そんな事…!」
「動物が狂暴化した原因を究明をするのも仕事に含まれてる。どの道、主犯者とは顔を合わせる事になりそうだな……」
真っ赤な光に包まれていくコーラルの森。
恒星の力が弱まり、昼間でも夕陽のような色をしている空が、夕焼けの時刻を迎え今は真っ赤に染まっている。
絶景といえるほどの光景だが、3人には何か良からぬ事が始まりを告げるようにしか思えなかった。
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