翌日。
――まあ、アムがソーマにテクニックを教えてもらっていた時に気合い入れすぎて森一面黒こげになったりとか、アムとイー・フリーナの着替えを覗こうとしたソーマが彼女達にラバータとライフルの手痛い反撃をくらったりとか、夜の内にいくつか騒動はあったのだが――
特に問題なく朝を迎えた一行は、早速朝食の準備に取りかかった。
「ソーマさんがあんな人だったなんて……」
「今度覗いたらダークレーザーで一発昇天して差し上げます……」
朝食代わりのレーションを食べながら、機嫌の悪い女性が2人。
2人の背中を見ながら視線だけ横へ逸らすと、ホータイだらけ、ボコボコのソーマがこれまたむすっとした顔でパンをかじっている。でも顔だけは無事なのはやはり美形のなせる技か。
どういう経緯があったか手に取るように分かるようで、ウィルは思わず苦笑いをこぼす。
「だから言わんこっちゃない…」
「だってよ、どう見たって美少女の部類に入る2人だぜ?これで覗かにゃ男がすたるってなもんよ」
「だからってなぁ……」
「そこいら編にしとけよ、ソーマ?保護者がここにいる事を忘れんなよ?」
額に交差点マークを浮かべつつ、ウィル。
「「聞こえてましたよ……」」
「あ、ハハハ……ば、ばれました?」
「……御覚悟を」
一言呟き、愛用のダークレーザーの照準をソーマの眉間にぴたりと合わせるイー・フリーナ。
アムはアムで……。
「グランツ、撃ってあげようか……?」
こちらも目が据わった状態でソーマを睨みつける。
「こらこら。お前らもそこらへんにしとけ。いくらソーマでもんな事したら死んでしまう」
2人の視線のあまりの冷たさに、ソーマはおろかシーガルまでウィルの言葉にカクカクと首を縦に振る。
「その代わり、俺がお仕置きしてやる。ソーマ、シーガル。腹ごなしにちょっと付き合え」
「うえぇっ?!なんで俺までっ??」
「そっちのグループリーダはシーガル、お前だろ?チームの中の問題はリーダの責任だ」
「「んな殺生なぁ〜!!」」
「腕が落ちてないか見てやるっちゅーとるんだ。つべこべ言わずにさっさと来るッ!!」
あわてて逃げようとする2人の首を引っつかみ、ウィルは森の奥へと歩いていった。
「あらら、行っちゃった……」
「ふぅ、ウィルさんも怒ってらっしゃったようですネ」
多少の同情と、多分の軽蔑の視線でアムとイー・フリーナはソーマを見送る。
しばらくして轟音と、2人分の男の悲鳴が聞こえ―――。
ウィルが引き返してきたのは結局昼過ぎになってからだった。
「うーん、運動にもなりゃしない」
「あ、アンタ鬼や。ウィル兄……」
「まだまだ精進が足らんね」
「も、もうしません…」
「分かればよろしい」
荒い息の2人に対して、ウィルは軽く汗を掻いた程度。
どうやら、あまり歯が立たなかったようである……。
「ウィル兄〜、そろそろ探索に出発しようよ〜」
「おう、今行く。
ほれ、いつまで休んでるんだ。行くぞ!」
「こ、この体力馬鹿教師…」
「ブツブツ言ってないで、早く来いって。置いてくぞ〜」
秘境の森は今日も比較的平和だった。
|