第二夜...「探索」
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「しっかし、今回の事件って妙だよな。年頃の女の子ばっかりさらって何するんだか。
 こんな森の奥で動物相手にその手の商売でもするのかよ?」

昼間でも薄暗い森の中。
GPS機能を持つ索敵役のイー・フリーナを先頭に、周囲に気を配りつつ歩いていく途中でソーマが不機嫌そうに呟いた。

「んなもの今頃はやるとでも思ってるのか?もー少し頭捻ろって……」
「わーってるよ!わざとだってーの。
 お前が感じてる嫌な予感は、下手すりゃお前より感じてるよ、シーガル」
 
最悪の事態をな……とソーマは不機嫌な表情のまま心の中でひとりごちる。
彼はニューマンではあるが、その身体には昔ガイアと呼ばれていた惑星の極東の島国、その北側にしか住んでいなかった民族の血が流れている。
戦闘民族であり、シャーマニック的な力も持ち合わせていたといわれる民族。
それ故か、危険に対する嗅覚は人一倍あるのだ。
だが、普段言っていることが結構下品(失礼)な為、よっぽど気心が知れた仲でない限り本意が伝わらない。
今回もそうだったようだ。変な誤解をされたらしく、アムとイー・フリーナがジトッとした視線を向けてくる。
哀れなり、ソーマ。まぁ、自業自得という話もあるのだが。

「そんな悪趣味な輩は、ご退場願いたいもんだな……っと。見ろ!」
「こんな所に隠してるなんざ、いかにも怪しい研究してますって感じだな……」

ウィル達の視線を追うと、そこにはカモフラージュネットなどによって巧妙に隠された何かの建物への入口が見えた。
そもそもキャンプの趣味が高じてハンターになったウィルや、鍛錬好きでよくこの辺りに来ているシーガルでなければおそらく見落としていただろう。
それほど周囲の自然と解け合っていたということだ。

「スキャン開始――終了。
 間違いありません。熱源、材質、どの観点から検証してみても人工物です。
 GPS検索の結果も一致。恐らくここが例のアジトだと思われます」

2人の確信をイー・フリーナがだめ押しする。

「ウィル兄、ここから行くの?」

アムが入口から視線を離さずに問う。

「むー、そうだな……。
 いかにも怪しいところから入るってのは向こうの誘いに乗せられてるようなもんだが……。
 ……時間もないし、な。…いっちょそれに敢えて乗ってみるってのもそれはそれでおもしろいか……?」

さりげなく危険なことを呟くウィル。
アムの表情が若干引きつっている様に見えるのは気のせいか。

「キツイかもしれんが、アムにはいい経験になるだろうさ。
 大丈夫、ちゃんとフォローはするから安心しろ。
 よし、敢えて正面突破して奴らの度肝を抜いてやろうぜ!」
「「「おうっ!!」」」
「う、うん……」




 
 

第二夜...「探索」
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