イー・フリーナのハッキングで電子ロックの扉を開き、建物内部に身を滑り込ませた5人はそれぞれの愛用武器を手に、周囲を警戒しつつ薄暗い通路を歩いていた。間接照明らしく、ぼんやりとした明るさだ。
入り口の外見とは裏腹に、内部は六角形の整然とした――表面が特殊セラミックでコーティングされた均一的な――通路が延々と続いている。更に所々には現在位置を示すホログラムを利用した仮想ディスプレイと、フォトンライトの光が見える。
一見すると、研究所と言うよりは大規模病院か、あるいは電子関係の工場を連想させた。
歩いていくと左右の壁に千鳥状に配置された扉があるが、ロックされている物がほとんどで、開くには多少の時間が必要だった。
捜索対象が何処にいるかも解らないこの状況では、面倒だからと確認しないわけにも行かず、時間を掛けながら部屋一つずつを捜索していく。
部屋には何も無いところや、大きな檻になっていたりベッドなどが備え付けられていたりと様々だ。
ただ、生物は一匹として確認できなかった。
「むぅ、以外と反応が少ないなぁ……?」
ギガッシュを肩掛けにしてつまらなそうに呟くシーガル。
そうなのだ。
実はここまで来るのに一応警備ロボット達と戦闘にはなったのだが、彼らの実力では雑魚も同然。
あっという間に片づけてしまっていた。
警備が手薄なのは本来喜ぶべき事態なのだろうが、さすが生粋のハンター達。考えることが一般人とひと味違う。
彼の足下には、つい今しがた破壊した警備ロボットの残骸がまき散らされていた。
「裏をかくことに成功したのか……あるいは、これも罠なのかもな」
「現時点では、その可能性は低いようですが……。確かに油断はできませんね」
イー・フリーナもウィルの意見に賛同する。
「だからって、これで油断するハンターはいねーっしょ?」
思わず方言が飛び出すほどのんびりしているのはソーマだ。
十分油断している…様に見えるが、そこはさすがにハンター、彼は彼なりに警戒を怠っていない。
「一応、掛けておいて損はないはずだから……。
シフタッ、デバンドッ!!」
対照的にガチガチに緊張しているのはアム。
初の本格的なクエストだけに、気負ってしまっているらしい。
「そんなに緊張してると、肝心なときに失敗するぞ。ほれ、リラックスリラックス!」
そう言ってアムの身体を脇に手を入れ後ろから素早くすくい上げ、くすぐり始めるウィル。
いい意味でも悪い意味でも本当にマイペースな男である。
「ひゃっ?!うぃ、ウィル兄ぃっ〜?!きゃひゃひゃあっ?!!」
たまらず身をよじるアム。
バトルバージを取り落とし、フォマールの服装が皺になるのも構わずにジタバタと暴れるが、ウィルの腕は離れない。
「も、もういいっ!ぅひゃっ!?ちょっ、じゅ、十分だからぁ〜!」
「はいはい」
「ひゃっ……はあぁ〜」
やっと擽り地獄から解放され、そのまま彼女は涙目のままへたり込んでぜいぜいと肩で息をする。
その光景にソーマが目を輝かせていたのは、この際秘密だ。ばれたらどんな事になるかは……推して知るべし。
今朝あれだけひどい目にあったというのに全く懲りない相方に、シーガルは思わず苦笑どころか背筋が寒くなる思いだった。
「もぅ、ウィル兄ったら〜!余計疲れちゃったよ……」
「悪い悪い。
でもな、何度も言ってるけどどんなところでも自然体でいるって事は大切なんだぞ?」
「それは、解ってるけど……」
「ウィルさんの場合、何というか……最短距離を走ってるって感じですよね」
苦笑しつつ、イー・フリーナ。
「悪かったな。さ、次の区画へ行くぞ〜」
何事も無かったようにウィルがそう言った時だった。
ズズゥンンンン…………。
「「「「「?!」」」」」
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