ズズゥンンンン…………。
「「「「「?!」」」」」
何かの爆発音か?
重苦しい振動と音が通路に響く。
「……震源は地下から響いてきたようです。
音に関しては……うーん、あっちこっちから反響してて位置が特定できないですねぇ」
「むぅ、取り敢えずはこのまま進むしかないか。イフィ、下へ移動するためのエレベータカーゴは何処にあるか確認できてるか?」
「さっきハッキングしておきましたのでその辺りは万全ですよ。
んー、このまままっすぐに進んで突き当たりで左へ曲がり、その後道なりに約400m先進むとカーゴフロアですね」
「OK。んじゃま、焦らず急いで行くとしようか」
異変が起こったのは5つ目の部屋に入ったときだった。
今までは貧弱な警備ロボットしかいなかったのに、エレベータカーゴの周囲の警備が異様に厳重になっていたのだ。
「レイキャスト・タイプが3機、と。2機は警備、もう1機は伝言用だろうな……。1機でも逃すとやばいか?」
部屋の入り口でシーガルが様子を見つつ呟いた。
「ここは一つ派手にゾンデ系で一網打尽にする方が得策じゃないか?」
派手好きそうに見えるソーマが言う。
しかしこの場合、彼の言葉はあながち的外れとも言えない。得てしてアンドロイドを代表するロボット系は電撃に弱い。
ある程度のダメージ量が期待でき、運が良ければ相手をフリーズさせることも出来る。
無論何事にも例外はあり、防電処理を施された特別仕様の機体(スペシャル・チューン)も存在するが、個体数は少ない。
「イフ姉、あいつらって軍用なの?」
「そーですねぇ……。
タイプ的に言うと軍仕様のRK-98Bから警備用にダウングレードされた機体のようですね。
元の設計が古い、警備ロボットという方がしっくりくる機体ですから、それほど脅威にはならないかと」
ちょっと考える仕草をして、イー・フリーナが言った。
彼女の持つデータベースは一般的な知識だけでなく、なぜか軍事関係にも理解が深い。
「そっか。じゃぁ……」
「俺達の出番だな、アムちゃん」
「もぅ、気安く呼ばないでくださいよぉ」
彼の実力は目の当たりにしたはずなのに、アムはやはりソーマのことを尊敬までは出来なかった。
ま、彼の言動がこんな状態なのでそれも致し方ないだろう。
「んじゃどーすれば許してくれるんだよ?」
言いつつ彼の手は自然とアムの腰の辺りに……。
さわさわ。
「っ?!」
現状を理解したアムの顔の変化のもの凄さといったら無かった。
一瞬白くなり、そして急速に赤くなり…。
ぷっつん。
「………やっぱりグランツで吹き飛ばぁすっ!!!」
「だぁっ!いいだろ、減るもんじゃなしっ!!それと…アムちゃんって以外と着やせするんだなぁ?
結構肉・感・的…♪」
「減るんですぅっ!!!そ、それに言ってはいけない事をぉぉっ!!覚悟ぉっ!!」
「ほ、誉めたんだってぇ!!」
「あなたに言われても嬉しくなぁーいっ!!!」
どたばたと追いかけっこを始めた2人に、ウィルは怒るかと思いきや苦笑い。
「やれやれ……」
「いいのかよ、ウィル兄?」
「気の済むまで放っておいてやれ。俺は強制や命令は嫌いだからね」
「放任主義ってか?…りょーかい」
「そ。親の背見ずとも子は育つってな!」
「ふふふ…ウィルさんらしいですね」
『ソコノ5名、IDかーどヲ掲示セヨ。掲示無キ場合ハ、侵入者トシテ即刻強制排除スル!』
案の定こちらの位置がばれたようだ。2機のレイキャストがこちらへとやってきた。
イー・フリーナが指摘したとおり単純なAIしか持たない、廉価版のレイキャストと言うよりは戦闘ロボットらしい。
片言の、声だけ威圧的な話し方である。
大型武器――ショットガンを両手で構えながら、2機の巨漢は一見隙無く仁王立ちしている。
「おうおう、ずいぶんと強硬な姿勢だな。律儀に警告してくれるのには関心だが。
そーいえばシーガル、お前さんさっき随分つまらなそうにしてたな。暴れ足りないか?」
「そりゃ、警備ロボットじゃ運動にもならないしな」
「んじゃ譲ってやる。準備運動ぐらいにはなるだろ?」
「恩にきるぜ、ウィル兄」
「私も援護します」
「一応頼むな、イフィ。ま、あいつの事だからサポートなんぞいらないだろうけど。
それよかカーゴ前に居座ってるもう1機の方を頼む」
「はい、了解です」
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