「えっ?!」
「ちっ、後続がもう来やがったかっ!」
わらわらと押し寄せる警備兵に虚を突かれ、後退する5人。姿を現した警備兵、併せて十数体。
一体一体の戦闘力が低くても、こうも数で押されてしまうと結構厄介だ。
しかし、ここで嬉々とするフォニュームが約1名。
アムを背後に移動させ、彼は――、
「くらいぃ――やがれっ!!」
がごぉんっっ!!
気合一発、問答無用でフォイエのアレンジ版を敵に投げつけた。
炎の玉は相手の顔面で砕け、金属的な音を響かせて装備重量数百キロの警備兵を数m程吹き飛ばす。
「火傷じゃ済まねーぜ!!!」
至近距離まで果敢にも接近してきた敵兵には、敬意を表して盛大にも襟首(?)をつかんで炎で機体を包んでやる。
相手が生身ならば酸素不足と火傷とで確実にあの世行きの、見た目にも豪快な精神力の高いニューマンだからこその荒技だ。
ロボに火傷もないものだとは思うのだが、全く効かないかというとそうでもなく、合成タンパク質を主構成物質とするマッスルパッケージを使っている機種には効果絶大なのである。
まさに、今押し寄せてきている機体はそのタイプだった。炎の中、途端に機能を停止する警備兵。
重ねて言う、ソーマは決して二流のハンターではない。彼もまた、判断も技術も一流なのだ。勘違いされるのは自業自得だが。
「はっはぁっ、おもしろくなってきやがった!」
「そりゃお前だけだっての!」
アムを背後に大暴れするソーマに敵兵を切り払いながらシーガルが怒鳴り、
「ソーマっ!危険物が大量にあるってのに、火を使うなって!火気厳禁がわからないとは言わせねーぞ!」
ウィルも愛用のラストサバイバーで応戦しつつ怒る。
とはいえ、彼ら2人は本気で怒っていたわけではない。
確かに危険であるとはいえ、突破口を開いたのはソーマなのだから。
「もう、こうすればいいのに……。
ジェルン、ザルア!おまけにバータ!ラバータ!!ギバータ!!!」
コカキンッ!
アムの発した強烈な冷気に、妙な音と共に運悪く固まる警備兵数機。
そしてそれらは格好の餌食になる。
「おぉ、そっか。さっすがアムちゃん!」
「誉めても何も出ませんよっ!!」
「ちびしぃなぁ…」
ソーマとアムを組ませてどうやら正解だったかなと思いつつ、ウィルは目の前に来た氷付けの警備兵を真っ二つにする。シーガルもまた凍った警備兵を真っ二つにするところだった。
「「次ぃっ!!」」
「そんなにすぐには凍らせられないわよぉ!わんこそばじゃないんだからっ!!」
アムは悲鳴を挙げつつ、再びバータ系テクニックの詠唱に入った。
『残存各機ニ連絡。退却セヨ!繰リ返ス…』
「逃がしませんよ!」
『!!』
いつの間に回り込んだか、イー・フリーナが敵兵から奪ったショットを手に仁王立ちする。
「ショットというのは、こういう風に使うんですっ!!」
言いながら発砲。
ハンドガン系やライフル系に比べて大容量なフォトン・チャンバーへ充填する関係上、一般に動作のタイミングが遅く扱いにくいと言われるショット系銃器だが、相手の動きを予測して、状況に応じ、使い方さえ間違わなければ、驚くほどの効果を発揮する。
今の状況が正にそうだった。おもしろいように敵がばたばた倒れていく。
「ふぅ…。
うふふ、快感♪
せっかくだからこれ、持っていきましょう」
イー・フリーナはあらかた敵を殲滅し尽くしてうっとりと微笑む。
まさに銃器マニアの面目躍如、流石にショットを捧げ持つ姿も似合っている。
「あ、あはは。イフ姉〜、ここでその発言は怖いよぉ…。
それにしても。さすがに5人もいると速いね」
傍らのイー・フリーナの言動に額に汗を浮かべつつ、アムが呟いた。
「ざっとこんなもんだよ、アムちゃん!見てくれたかい?」
「えぇ、まぁ」
「冷たいなぁ。さっきのだってちょっとした愛情表現じゃないかぁ」
「だからっていきなり触るのは…ちょっと……」
「ごめんな。アムちゃんが可愛かったから。
つい、ね」
「えっ?!………ばぁか…………」
顔を赤らめて俯くアム。
「こらこら、いい雰囲気醸し出してないで。
そろそろここを離れた方がいいと思うんだが?」
シーガルが無粋かつ的確な突っ込みを入れる。
あと一押しだっただけに一瞬ムッとなるソーマだったが、確かに一理あるため渋々それに従った。
「そ、そうだな。わかったよ………ち…後もう一歩だったのに………」
「………!!っ………ホッ…」
呆然自失となっていたアムは、自分のしていたことに今頃びっくりした。
危ない危ない。危うく彼の毒牙に引っ掛かるところだった。
今度から気をつけないと……と、彼女は堅く心に誓うのだった。
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