(……ココハ、ドコ?)
(……ボクハ、ダレ?)
ぼんやりした頭で、思い出そうとする。
しかし、いくら思い出そうとしても、その答えの回答は出ない。堂々巡りするばかりだ。
いや、今はそんなことを気にしている暇はない。
(……アノ娘ヲ…探サナクチャ……助ケナクチャ……)
あの娘?
湧き上がる記憶。
しかし、それらはすぐに靄の中に沈み込み、あやふやな、輪郭のぼやけた絵のようになってしまう。
でも、探しに行かなければ。
大切な、大切な……。
(……マタ!邪魔ヲシナイデッ!!)
戦い方など知らない。だが、身体が勝手に反応した。
これで何度目だろう。
目の前に現れた"敵"を切り伏せ、彼女はただひたすらに前に進む。
自分の足で立っている筈なのに、奇妙な浮遊感が取れない。
もやが掛かった様なはっきりしない意識と視界の中、夢遊病者のように少女は何かに引き寄せられていく。
(…ボクハ……何処ヘ行クノ?)
(…姉さん……)
(?!、ダレッ?)
(…助け…て……)
(……てぃ…あな……?
ボクの……ティアナ………っ!!)
「ぅ…ぅう…がぁあああああぁぁぁぁあああっっっっっっ!!!!!」
電撃に打たれたかのように身体を仰け反らせ、少女は突然絶叫した。
獣のような叫びが一帯に響き渡る。
その声の主旋律は、悲しみと苦しみが渾然一体となったもの。
「ああああああああああっっっっっ!!!!」
それを壁に、床に、叩きつける。
緑色のフォトンの刃を有した紫色の鎌――ソウルイーターが風を切り、めちゃくちゃになった壁に深く食い込んだ。
「はあっ、はあっ、はあっ……?!っ……」
ドクンッ!
まただ。
気持ちが悪い。
頭の中が混濁し、急速に視界が狭まった。
動悸が激しくなると同時に体中から血が抜け落ちていくような、身体が空気に溶けていくような感覚が襲う。
爪先から急速に冷えていく。あれだけ動いた身体が、急に重くなる。
どっと身体中から冷や汗が吹き出した。寒い。
ソウルイーターが手から滑り落ち、カシャン、と硬質の音が響いた。
膝から、腕から、腰から力が抜け。
少女は糸の切れたマリオネットのように、力無くその場に崩れ落ちた。
焦点の合わない瞳で通路の奥へ、更に進もうと足掻く。
しかし、その動きは非常に弱々しかった。
どのように身体に力を入れればいいか解らない。それほどまでにその少女は消耗していた。
その消耗は疲弊した身体や精神に眠気として襲いかかる。
少女はそれに抗えず、意識は闇の縁へあっという間にさらわれていく。
「…あぅ……ああぁ…っ…」
絶対……助けに行くから。
ボクが……必ず……。
ティアナ……。
少女の意識は、そこで闇に沈んでいった。
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