第四夜...「突入、そして罠」
| |






「ぬおぉあぁああぁぁぁりゃぁあああああっっっっ!!!!」

雄叫びをあげ、真っ先に飛び出したのはシーガル。
早速目の前に"アメンボ"が現れたが、ギガッシュの一撃で跡形もなく粉々になった。
本来、こういった重量のある武器は立ち止まって振るうべき物である。
移動しながらでは重心の移動や力の乗せ方などが格段に難しくなるし、命中精度も低くなるはずだ。
それを乗り越えて相手を撃破するのは相手が例え雑魚でも至難の業であるはずなのだが。

「出てこい雑魚共ぉっ!この俺が相手だぁっ!!」

そんな苦労は微塵も感じさせず、シーガルは心底楽しそうに叫ぶ。
その声に反応するかのように、あちらこちらから"アメンボ"が姿を表した。

S4、スタンガン:発射シークエンス確認。
回避行動。

「ごめんなさい、先を急ぎますので……」

絶妙のタイミングでスタンガンを回避したイー・フリーナの一言と共に、彼女の手の中のヤスミノコフが火を噴いた。
集中していた数機が強装弾の衝撃で吹き飛び、あっという間に破片になっていく。

「んん〜、この衝撃がたまりません♪」

やっぱり言動がアブナイのはもはやお約束か?

「シフタッ!デバンドッ!!、おまけにジェルン、ザルアッッ!!!」
「喰らいやがれっ!!ギバータ!ギフォイエ!!ギゾンデ!!!」

アムはサポート系、ソーマは攻撃系テクをショートカットを駆使して連続発動させる。
本来は精神統一が必要なテクニックも、腕に装備する携帯端末に「ショートカット」として登録しておくことでさほど無理をせずに繰り出せるのだ。
精神領域――魔法学では一般にアストラルサイドと表現されている――から力を引き出すための直接的な触媒は、テクニックを発動した本人の精神力になるのだが、その引き金は擬似魔法回路を有した機械が代行することも出来る。
テクニックが"科学魔法"と言われる所以のひとつがこれである。

「やれやれ、あまり使うなって言ったのにな!」

殿をつとめるウィルは、時折至近距離まで寄ってくる"アメンボ"をラストサバイバーで蹴散らしつつ、ブツブツ文句をこぼした。

「んなコト言う暇もないってかっ!?」

後ろから襲いかかってきた高機動型の警備兵――脚部ローラ付きのレイキャストタイプ――を振り向きざまに横薙ぎに一閃。
3機いっぺんに真っ二つになる。

「ったくよー、文句言う時間ぐらいくれても……。
 しっかし。ずいぶんと施設に金掛けすぎたんだろうな、警備がおざなりだぜ」

何事もなかったのように、ブツブツ言いながらも蹴散らしていく辺り、彼もただ者ではない。
迫りくる障害を来る側からなぎ倒し、進む一行。
その勢いで4km程走り抜け、5人の前にようやく1つ目のチェックポイントが見えてきた。

「ウィル兄、エレベータが見えたっ!」
「おっしゃ、突っ込めシーガルッ!!」
「だりゃあああぁぁぁぁあああぁっっっっっっ!!!!!」

雄叫びと共に、閉じかかっていたカーゴの扉へ向かって突撃するシーガル。
そのまま勢い込んでスライディング体制に持ち込み、カーゴ手前を囲む"アメンボ"を蹴り飛ばす。
が、その為に逆に勢いを殺されて逆に額(?)に交差点マークをたくさんつけた"アメンボ"達に脚でボコボコにされてしまうシーガル。

「痛っ!いてててて?!」
「何もそこまでやれって言ってないぞ、俺はっ!!」

彼らをしとめようと近づく"アメンボ"達を、軸足で回転するようにラストサバイバーを振ってぶった切りながら、ウィルは苦笑。

ダムッ、ダムッダムッッ!!!

「あまり無理しないで下さい。ある程度はこちらで殲滅しますので」

銃口から硝煙をたなびかせつつ、イーフリーナが微笑む。
だから怖いって(笑)。

「乗り込めぇっ!!」

後から後から現れる"アメンボ"の大群を押さえるため、ソーマがラゾンデを乱射しながら叫ぶ。
援護するイー・フリーナも弾の限りに撃ちまくり、弾切れと同時にエレベータカーゴの扉が閉まった。
下降と同時に僅かな休息が訪れる。

「戦闘は避けろって言ったろうが……」
「避けましたよぉ、可能な限り」

ヤスミノコフに新しいカートリッジを交換しながら、イー・フリーナ。

「状況は刻一刻と変わってる。躊躇してたら俺たち蜂の巣だよ、ウィル兄」
「あの状況で何もしないで走り抜けるなんて無理だよぉ」
「いつの間に結託しやがった、お前らは!
 とにかく、弾や精神力は大事にしろよ!これから何が起こるか、何が出てくるか検討もつかん!」

苦笑しつつ言うウィルに、アムとイー・フリーナも苦笑で返す。

「「「了解っ!」」」
「ほいほいっと」

とか言いつつ、ソーマが飲んでいるのは…。

「だぁからっ!いきなりトリフルイドなんて飲んでんなよ!!」

いつもなんだかんだとはぐらかすはずの彼が、今回は黙っていた。
シーガルに言われても、何処吹く風。
高級品の精神補給剤、トリフルイドを惜しげもなく飲み干し、パックをポイッと放り捨ててソーマがつぶやく。

「おいでなすったぜ……」

丁度その時、カーゴが停止。
扉が開くと――通路一面に"アメンボ"の群が集結している。
言葉とは裏腹に、実弾とフォトン弾とテクニックの一斉射撃が始まった。
あらかた吹き飛ばして道を作った一行は、さらに前へと進んでいく。




 
 

第四夜...「突入、そして罠」
| |