彼らの突入から数時間前……。
「…単独潜入にて敵性体の状況を探り、可能であればそれを殲滅せよ。
今のお前ならばさほど苦労することはあるまい?」
「それは兄者の仕事でござろう?」
「阿呆、今回はお前の経験値稼ぎが主目的だ。私は私でやらなければならない仕事がある」
「ふむ」
「それに、"ニンジャ"を自負する者であれば強行偵察は避けては通れんだろう?」
「……分かり申した」
暗闇に包まれた秘境の森。
風が流れ、雲の切れ間から月光が差し、一瞬その者たちの姿が姿を表した。
紅と蒼の装甲を持つアンドロイドだ。
一方は紅い複合装甲を持つレイキャスト、もう一方は蒼い細身のヒューキャストらしい。
「……前から言いたかったのだが。お前、その時代がかった口調何とかならんのか?」
「これは某(それがし)の存在意義である故、滅多な事では崩したもう事なかれ」
「……あぁ、もういい。行って来い」
「では兄者、行ってくる」
口調は時代がかっていても、そこは最新技術が結集されたアンドロイド。
物音も立てずにあっという間に姿が見えなくなる。
「しかし奴め、さすがに用意周到だな。
自分たちがもしも失敗したときの保険として我々を指名するとは…」
鉄面皮だけに表情は変わらないが、カメラアイを細めて小さく笑った紅いレイキャストは愛用のストゥームパンツァーを右手に、ライフルを肩のハードポイントにくくりつけ、前を見据えた。
と、纏う雰囲気が変わる。
「ふん、早速お客さんと見える。
ここはひとつ、丁重にお迎えしなければ、なっ!!」
気配を察知、怪物が飛び出してくると同時に腕中のストゥームパンツァーが轟然と火を噴いた。
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