第四夜...「突入、そして罠」
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飛び掛る四足小型変異獣を薙ぎ払う、パルチザンのフォトンの残光。 「むぅ、面妖な……。出てくる奴らは禍禍しい動物ばかりだな……」 周囲を見回しつつ、そのヒューキャストはポツリと呟く。 「……?!」 その時感じた異様な気配に、カメラアイがスッ、と細くなる。 「…大物か……」 パルチザンを両手で改めて握りなおす。 「…しかして……降りかかる火の粉は払わねばならぬ。 蒼いヒューキャスト―シンデンが無駄のない動きで敵へと突進する。 ぐるあぁぁぁああっっ!!! ソレもまた、シンデンの殺気を感じ取ったのか歩む勢いを増した。 「ク…ぬかった…」 しかし、シンデンもただでは済まなかった。 「……悩んでも始まらぬ…行くか……」 パルチザンを軽く振り背中のマウントに固定したシンデンは、その昔存在したという"ニンジャ"の如く、片目が無くなったのを感じさせない軽い身のこなしで通路の奥へ奥へと進んでいった。
その翠の髪を持った少女は、通路に倒れ伏していた。 「う…く……?」 遠く、近く。 「……来…ない…でぇ…」 また、あの"力"が表に出てしまったら。 「…や…だよぉ…」 逃げなければ。 「……んしょ、っと」 たまたまポケットに残っていたモノメイトをかじり。
こう見えてもソーマの視力・聴力はかなりいい。 「気配はするな……」 ウィルがポツリと言う。 「いきなりビンゴかも!?」 逸るシーガルとソーマとは対照的に、ウィルは押し黙ったままだった。 「イフィが足止めに残ってくれた今、安易に動くのはまずい…。 その時だった。 『来ないで!!』 直接頭に響くような、少女の「声」が聞こえた。 「「「「?!」」」」 慌てて辺りを見回すが、4人以外には誰もいない。 『……お願いだから…ボクに近寄らないで…』 再び聞こえる声。 「どこにいる?!俺達は君達を救いに来たんだ!」 辺りを見回しつつ、ウィルが怒鳴る。 『…来な…い……で…』 「!、ちぃっ!!!」 通路はちょうど十字路に差し掛かった所。その右側奥に翠色の髪の少女が力なく座り込んでいる。 「間に合ええぇぇぇぇっっ!!!!!」 彼女を掴もうとした腕をサバイバーで叩き切り、そのまま更に横へ振り切る。 「大丈夫か?!」 フラリとよろけた彼女のその身体をしゃがんで受け止める。 「まずは一人目、救出だな」 ほっと息を吐き、ウィルは皆に振り返った。
「ん…」 はっきりしない頭で、エミーナはぼんやりと辺りを見回す。 「ソーマ、まだモノフルイド残ってたか?」 そう言って彼は、エミーナの口に少しづつ流し込んでいく。 「…んっ……んくっ…」 液体が、身体に薄く広がっていく感覚が心地いい。 「ウィル兄、その子が…?」 今度は視界に青紫の髪をもつ女が現れた。 「…うん。正真正銘、この子みたい。95%以上の確立で本人だって」 安心したようにうなずく男。 「君が、エミーナかい?」 そう言って、彼は彼女の身体を優しく抱きしめた。 「…あ…っ…」 何故か、彼の言葉は信用できるような気がする。 「相当疲れてたみたいだな、この娘」 シーガルがウィルに縋りつくようにして寝息を立て始めた少女――エミーナを起こさぬように小声でウィルに話し掛ける。 「あぁ、見たところかなり疲弊してる。 その傍らで、ソーマは一つの嫌な予感が当たってしまっていたことを感じていた。ウィルやシーガルにも伝えていない彼の忌むべき過去。 『……あの野郎…まだ生きてたとはな…。絶対ぇ許さねぇ!』 過去の自分をエミーナに重ね、怒りに燃えるソーマ。
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