「まだまだだな、シンデンッ!!」
野太く、それでいて安心感を与える声が空間に朗々と響き、次の瞬間巨大な火球が怪物の横っ面に命中した。
続けて2発、3発。立て続けに命中する火球。
悲鳴を上げる暇なく、ムカデは巨大な火達磨となり――やがて派手な水柱を立てて水中へと没した。
「あ、兄者!?」
「ふん、あれくらいでたたらを踏んでは勝てるものも勝てんぞ」
対岸から歩きながら、言葉の割にはずいぶん柔らかいニュアンスでパンツァーファウストを背負った紅いレイキャスト――ライデンが苦笑した。
「何故ここに?!」
未だ信じられない、といった雰囲気のシンデンにやれやれと肩をすくめる。
「言ったろう、用があるとな。最も、ここでお前と会ったのは偶然だが…」
言いかけ、その背後の人影に気付く。
「おや、君は…?」
「……お久しぶりです、ライデンさん」
イー・フリーナが微笑んだ。
「久しぶりだな、フェアリィ」
ライデンからヤスミノコフを受け取りつつ、恥ずかしげに顔を俯かせるイー・フリーナ。
「……その名前は、やめてください…」
「すまない、そうだったな。
…弟のシンデンは今回調整の為にこのミッションに参加した。俺は様子見というわけだ」
「兄者は相変わらず話を変えるのがド下手くそでござ候」
「む…」
押し黙るライデン。
人間なら苦虫をかみつぶしたような表情をしていることだろう。
「いえ、いいです。
たしかにあなたと出会ったあの時は、そう名乗っていたのですから。
それに、あなたがこんなタイミングで現れたのもおおよそ予想はつきます。
ウィルさんから連絡が行っていたんでしょう?」
苦笑を浮かべ、イー・フリーナ。
その言葉にライデンも肩をすくめた。
「……その通りだ。ついでに様子を見てやってくれないか、とな。
彼には少なからず貸しがある。
仕事のついでならよかろうと寄り道した次第だが……案の定、来て正解だったようだな」
文字通りの鉄面皮だけに表情は分からないが、その雰囲気は安堵した様子が見て取れる。
「いつまでもボーっと突っ立っているのだ?ずぶ濡れでは装甲がふやけてしまうぞ」
ライデンの冗談に2人は顔を見合わせた。
シーガルがそこにいたならば本気で驚いていたことだろう。
「初めてまともな冗談を言った」と。
「ふむ、2人とも見たところこっぴどくやられているな。
シンデン、イー・フリーナを任せられるか?」
「命に代えても」
思う所があったのか、ライデンは一つ頷くだけだった。
「さて、帰還を…」
彼が呟いたその時。
キシャァァァァァァァァァッッッッ!!!
「まだいたのか?!
シンデン!!イーフリーナを連れて先に行け!!ここは私が引き受ける!!」
「武運を祈る、兄者!」
「任せておけっ!!」
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