ソーマのその一言が、戦端を開いた。
素早く印を結び、彼の精神に呼応してシフタとデバンドが発動する。
更に連続詠唱――!
「ラフォイエッ!!!」
「俺のことも無視してもらっちゃ、困るんだよね!」
テクニックの援助を受けるが早いか、シーガルが一直線に斬りつける!
『小賢しいッ!』
「ごはっ?!」
複合体の腕の一振りで元いたところまでラフォイエごと弾き飛ばされるシーガル。
「正攻法だと、やっぱ駄目かぁ…?」
「試したんかいっ?!」
暢気にぽりぽりと頭を掻くソーマに煤だらけのシーガルは怒鳴りつけようとして、やめた。
こういうときのソーマは必死に戦略を練っている。
「…押して駄目なら引いてみなってな。こうなったらマジで手加減しねぇからな!」
『やれるものならやってみろ。せいぜい足掻いて見せるがいい』
「ふふん、面白そうじゃない。予定してたのとはちょっと違うけど、あたしも混ぜてもらおうかしら?」
その時薄闇からもう1人、人影が姿を表した。
「?!」
「だ、誰だあんた?」
黒いスーツに身を包んだその女性は、フォトン・カートリッジの切れたヴァリスタを投げ捨て、腰部にマウントされていた2丁のマシンガンに手を伸ばし、しっかりと両手にグリップする。
不敵な微笑みを浮かべたまま闇を歩むその姿は…正に"鴉の淑女"…。
「ケイ=ラピデェリー。
ウィルの知り合いよ!んなこと言ってる暇があったら、とっととあのデカブツを撹乱して!」
「お、おう!」
『蝿が一匹増えたとて無駄だ。我の本体はすでに退避を完了した。
私を倒したとて、貴様らには何の得にもならんぞ。ククク……』
「くっ…!」
「痛ってて…なんてぇ物騒な…殆ど反則じゃねぇか、あれ!」
ケイの指示で左右から攻撃を開始したシーガルとソーマ。
だが相手が大き過ぎる上、オプトの持つ火力の激しさに近寄る事すら出来ない。
むしろ反撃をよけるのに精一杯だ。
「……そう、こいつに本体、いえ、実体なんて物はないの。
…そもそも研究用に開発されたAIプログラムが擬態の為にアンドロイドを動かしていたに過ぎない。
今あたし達が戦ってるこいつだって端末でしかない。そのシステムの名は、AI"オプト"…」
「なんだって?!」
確かにAI…人工知能(近年では人工存在と称する科学者も現れた)は広く普及し、現在では人権も認められてなんら人間やヒューマンと代わらない生活を手に入れている。
だが、その存在はアンドロイドに限られるはずで…システムそのものを統括するAIと言うのは、ソーマには初耳だった。
『む、貴様どこまで知っている…?』
「……違法なクローンの作成、無許可薬剤所持、建物の無許可建築、建築物の不正占拠、人体実験、 業務上過失致死。それに殺人罪、無許可擬体の使用、と。
大雑把にこれだけでも冷凍刑200年くらいは確定かしらねぇ…?」
くすり、と冷笑を浮かべるケイ。
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