第五夜...「みんなはひとりのために」
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「やっべ、ティアナちゃんまで凍っちまった…w」
「…とりあえず、これで終了かしらね…?
 …多分、ティアナって子も生きてるわ。解凍を待って、睡眠薬注射しておかないと…」

背部ハッチを撃ち抜いてカバーを強制排除したケイは、"オプト"の本体部分であるメイン記憶部を引っぺがしながら、やれやれと呟いた。

『…クク…ク…。
 …我…ヲ倒シタ…とテ…、おめおめ生きて帰れると思うなっ!!』

ピィィィ!!!!

辺りに警告音が流れると同時に、証明が落ち、代わりに赤色点滅灯が点滅し出した。
同時に、ケイの手元にあるメイン記憶部から白煙が上がる。

「っ!!、まずっ!」

慌てて手元の端末からコードをつなぎデータの吸出しを始めるが…。

「あっちゃぁ…短絡思考、ここに極まれり、かしらね…」

諦めた口調でコードを引き抜き、それを放り投げた。
オプトは、回路を焼くことでデータが持ち去られることを阻止したのだ。

『警告。緊急事態発令。
 こんでぃしょんLvE。めいんしすてむハ自爆を決議シマシタ。
 5分後ニコノ施設ハ自爆、放棄サレマス。速ヤカニ脱出シテクダサイ。
 繰リ返シマス。
 警告。緊急事態発令…』

「だぁぁっ!!!、あのピ〜野郎っ!最後の最後まで性根が腐ってやがる!!!」
「自爆コマンドね…最後の最後に強制介入したんでしょ…」

一斉にため息を吐く3人。

「さて。ここから脱出する為には、走って帰って5分以上掛かるわけだが…。
 ソーマ、帰ろうぜ?」
「ほれ、テレパイプっと…おやぁ?」

いつもの通り、テレパイプの起動スイッチを入れて床に放り投げるが、一瞬ゲートが展開した後力尽きたかのように立ち消えてしまった。

「ん?不良品か?それ、も一つ…」

やはり結果は同じだ。一瞬展開してもすぐに閉じてしまうテレパイプ。

「もしかして…!」

ケイが慌てて手元の端末を操作する。

「…空気中の電荷が異常に低い…?!
 やられた、エレクトリック・ジャマーが流布されてる!!ったく、質の悪い…」
「エレクトリック・ジャマー?」
「そう。軍用装備の一つなんだけど…人体には無害、空気中の電荷を下げる働きを持つ粉があるの。
 本来はこれを展開することで、バッテリー駆動のロボット兵器を足止めするために使うんだけど…。
 これだけ濃密に流布してるとなると、テレパイプの展開にも影響が出るわね…」
「って事は、脱出不可能。とフツーは考えるわなぁ」

睡眠薬を無針注射器で首筋に注射され、ぐったりとしたティアナを背負ったシーガルと、ケイが比較的楽観的な表情をしているのに対して、ソーマは愕然としたように青い顔をしていた。

「ソーマ?」
「大丈夫だ、俺は使える。ただ…」
「何か問題でも?」
「…問題はアムちゃんなんだ……。あの娘…まだリューカーを習得出来てない!!」
「「なっ?!」」


 
 

第五夜...「みんなはひとりのために」
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