戦いは熾烈を極めていた。
彼の刃は彼女には届かず、彼の命数だけが減っていく。
「どウしたンだヨ、そレデ終ワりかイ?」
あざ笑うかのように倒れたウィルを見下すエミーナ。
先ほどエミーナを投げ飛ばしたアヤでさえ、今もう一度同じことをしてみろと言われて出来るかというと、無理だと答えざるを得ないだろう。
それほどまでにエミーナは短期間で見違えるほどの動きになっていた。
まさに、異常なまでに。
ウィルの動きをトレースし、自らに取り込む…何年か掛かってやっと彼が習得した動きを彼女は数瞬でやってのけたのだ。
「…つマんナいノ。…お姉チャん達…ボクと一緒ニ遊ボう…?」
倒れたまま動かないウィルから、ゆるりと視線をアムとアヤに移すエミーナ。
感情が無かったその表情に、凍りついたような笑みが浮かぶ。
人形のようなその酷薄な瞳を自分達に向けられた時、アムも、アヤも射すくめられたように動けなくなった。
”今度は自分達だ”
そう、思った。
「あ…」
「…いや…ぁ…」
「……ふっ…。
…これぐらいで…終わると思ってんじゃないだろーな?」
エミーナが二人の方へ歩もうとしたその時、静寂を破る声が部屋に響いた。
「「ウィル兄!!」」
少々ふらつきつつも、しっかりと両足でウィルが立ち上がる。
「ふふ…まダ生キテたんダ?もット遊んでヨ、ねぇ。
ボクを…楽しマセて…ゾクゾクするぐらイっ!!!」
『もうやめてよぉ、ウィル……ボクはどうなったっていい!
だから…だから、これ以上無理しないでよぉ!!』
"二人"のエミーナの、相反する叫びが空間に放たれる。
次の瞬間。
「…やれやれ、世話の焼けるいけない子だな。そういう子にはお仕置きだ!!
根性〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!!」
掛け声一発、一際大きな爆発音が響いた。
「…けほっ。
ウィル兄、アヤ!助けにきたよ!!!!」
「来てくれたか!ライデン!シスカ!!」
「ライデンさん!シスカちゃん!!」
「シスカァ!」
派手な爆発とともに、赤い鋼鉄の装甲をまとったレイキャストと、その肩に掴まった埃まみれになっている少女レンジャーの姿を見て、3人は顔を綻ばせた。
「ボクの…邪魔をするなぁぁ!!!」
「むぅっ?!」
「させるもんかぁっ!!!」
鎌を手にライデンに切りかかるエミーナを、シスカはグンニグルで果敢にも真っ向から受け流す!
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