「っ?!」
「アム姉、今っ!!!」
「ゾンデ!!!
アーンド、ジェルン、ザルア!!」
「ク、身体が…?!」
予想もしない反撃に隙が出来た所へテクニックを叩き込まれ、その場にがくりと膝をつくエミーナ。
「防御、攻撃力低下テクニックに、更に感電のおまけつきよ!もう、やめましょう!!
こんな事したって、何も生まれないわ!」
半泣きのアムが、ウィルとエミーナに語りかける。
しかし、全身血だらけのエミーナはそれを笑い飛ばす。その表情に、死相が出てきているのにアヤは気づいた。
「やメる…?ヤメル…アハハハ…!!
ボクにハ何も残ってナい!帰る所モ!家族も!!生きテいク時間スら!!!
ソれナのに…ヤメロって…?アハハハハ……ボクなんテ…いなクナれば良イんダよ。
…そウさ…ドうセ…誰にモ…望まレなかっタんダかラ…!!!
……ウワアアァアァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
絶叫するエミーナを中心に、突風が舞い起こる。
彼女の絶望の声が、"神降ろし"で強制的に憑依させられた精神体に力を与え…
そして、ソレは次第に彼女の精神を、命を蝕んでいく…。
PiPi!!
唐突に、ウィルの腕に括り付けられている端末が呼び出し音を奏でた。
画面を暢気に見ていられる暇は無い、音声のみで受ける。
「ウィル!無事っ?!」
「ケイさん!?どうしました?」
少々慌てた風のケイの声に、驚いたように答える。
まさか彼女まで参加しているとは思わなかったのだ。
…いや、彼女にしてみれば「こんな楽しい話」、参加しているだろうとは思っていたが。
「こっちは作戦終了。
親玉も仕留めたし、ティアナって子も無事よ。ただ、ちょっとまずい事になったわ」
苦い苦笑を漏らすケイ。
彼女がそういう笑いをする時、非常に悪い事しか起こらないのを知っているウィルは冷静な表情を繕った。
「なんです?」
「…最期にコイツ、この研究所自体の自爆コマンドをセットしたのよ」
「?!」
悲鳴をあげないようにするのがやっとだった。
最後の最後に、最悪の罠にはまったのかもしれない。嫌な予感がした。
「最大、後5分。
そして…ソーマの情報だと…アムちゃんは……リュ―カーを使えないそうね」
「えぇ、でもテレパイプがあるでしょう?」
「…エレクトリック・ジャマ―が流布されていると言ったら…分かるかしら?」
「!!!っっ……そういう事ですか。分かりました、最善を尽くします。
そちらはソーマと一緒に脱出してください。万が一の時は……後の処理をよろしくお願いします」
嫌な予感は現実のものになった。
やはり、罠だったのだ。
実験対象であるはずのエミーナという「餌」をわざと泳がせ、自分達をおびき寄せ。
そして、一番効率的な場所で餌もろとも処分する……いかにも奴の好きそうな事じゃないか。
恐らく、エミーナには実験体として何らかの欠陥があったのだろう。
全身の血が逆流しそうなショックと怒りを押し止め、ウィルは努めて冷静な声でケイの回答を待たぬまま通信を切った。
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