第五夜...「みんなはひとりのために」
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一方、反対側のブロック。

「ライデンッ!?」
「おちつけ、シスカ!」
「でもぉっ!
 だって…そんな…アム姉が…アム姉がぁっ…!」

ライデンに引っ張られ、何とか退避したものの。
涙目で半狂乱になって喚くシスカ。
ライデンは軽くシスカの頬を張る。

「あぁうっ!?」
「アム嬢ちゃんやウィルの気持ちも察してやれ!!
 どんな気持ちでやってると思ってる!

 …それに、そうと決まったわけではない」
「…そうだけど」
『 …俺の気持ちはどうでもいいのか?』

かすかにソーマの苦笑する声が聞こえる。
うずくまるシスカを見て、苦しそうにライデンは続けた。

「感情に流されていては、うまく行くものもそうでなくなってしまう。
 彼らがやれる事を精一杯やるのなら、我々もまた精一杯やることで返すのが礼儀ではないのか?
 問題なのは結果ではなく、意思だ。
  やり遂げる意思、諦めない意思、それらが導く先にある物こそ、我々が重視すべきものなのではないのか?
 …確定した未来など無い。
  故に、行動を起こさぬ者に、未来を決定する権利などありはしない」
「……」
「だからわたしも行動する。最後のその瞬間まで…」
「…わかった。私も行動するよ、ライデン。
 でも私は、納得なんて絶対しない!!
  こんな所で、こんな事でアム姉が死んでいいわけなんて、絶対に無いんだ!!
 …だから、私はそれを絶対否定するために動く!!」

迷いを捨てたシスカの、力の宿った視線を見て、ライデンは頷きながら言った。

「それでいい。それでこそ、未来は嬢ちゃんの望んだカタチになるはずだ」

一方のアムは、残されていたフルイドをすべて消費し、いよいよ展開フェーズに入ろうとしていた。
端末から流れてくるソーマの声には雑音が混ざり始め、聞き取りにくくなっていた。

「そろそろ…こいつでも辛く…って来たかな…用意…かい?」
「ハイ、準備OKです」
「それじゃアムちゃん、最後に一言…」
「え?」
「………愛してる」

通信はそこで閉じた。


 
 

第五夜...「みんなはひとりのために」
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