最終夜...「ひとりはみんなのために」
| |





吹き飛ばされ、それでもなお追ってきたアヤを視界に入れ、ウィルは苦笑を深くする。

「…後2分30秒!!時間がないぞ!」

アムを守るように立ち塞がったライデンが、バズーカでエミーナを牽制しながら運命のカウントダウンを開始する。
それを聞いて、弾かれたように前へと飛び出すウィル、それに続くアヤとシスカ。
望みとするには、あまりにも確立が低過ぎる。
…深く考えては駄目だ、とウィルは思いなおす。
今出来ることを。
最後までやりぬけることを。
アムの命と引き換えるには、あまりにも安すぎる代償だと思いつつ。

『道が…見えない……っ!ソーマさん、どこにいるの…!?』

泣きそうになりながら、歯を食いしばるアム。
自分が成功しなければ…皆が失われる。全ての努力が水泡に帰すのだ。
そっと目を開ける。
自分を守ろうと必死に攻撃を仕掛けるウィル、アヤ、シスカ。
装甲が傷つくことも厭わずに立ち塞がるライデン。

『みんなっ…!!』

溢れる涙をそのままに、再びギュッと目を閉じる。
もう、皆を見るのはこれっきりにしよう。
決意が鈍ってしまうから。
今は、最後までやりぬけることをするのみ――。

『…何故ダ?!』
『何故、絶望ノ淵に立ってイる者がこレホどまデに希望を持テる?!』
『何故、あレほド痛めツケたのにココまデ動けル?!』
「何故ダぁ?!」

エミーナの身体を操る闇の絶叫。彼女には理由がわからなかった。
運命とは受け入れるものであるべきで――拒むものではないはずだ。
なのに、目の前のこいつらはコイツラハコイツラハ…!!

「だから言っただろ!!」
「これで終わる――」
「私たちじゃないっ!!!!」

ウィル、アヤ、シスカによる全力を叩き込んだ9連撃。
絶妙なコンビネーションによる猛然としたラッシュに、身体の生態限界を迎えたエミーナはろくな防御も取れず、後方の壁へと吹き飛ぶ。

「根性〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
「ウワァッ?!」

止めの一撃。
ライデンのバズーカの直撃を受け、ソウルイーターが弾き飛ぶ。
そのまま壁に叩きつけられた彼女は、呆然とウィルたちを見上げた。
その表情が、不意に穏やかな笑みを作った。
まるで、氷が氷解したかのように。

「…これでいい。…後は…頼むぞ…」

次の瞬間、落ちてきた鎌がエミーナの右胸部を、深く刺し貫いていた。


 


 
 

最終夜...「ひとりはみんなのために」
| |