「…そうか、分かった。
無事に帰ってきてくれればそれでいい。頑張れ!!」
『…ソーマさんも、ご無事で!』
「まかしとけって!」
ポイっとケイに通信機を放り渡し、ソーマはふぅとため息をついた。
「大丈夫そうか、あっちは?」
投げやりな動作に心配したか、シーガルが心配そうに聞く。
ソーマの答えは、彼をより驚愕させるものであった。
「アルディスのご加護があるからな、大丈夫さ」
「まさか!!……アルディスって…エミーナが?!」
「この先もずっとその状態なのか。
それとも一時的なものなのかは、見当がつかんけどね」
考え込むシーガルを横目に、ケイがソーマに聞く。
「一体、どういうこと?」
「ん、どういうこと、って?」
「…光の聖女、アルディスと言えば、霊帝アモスフェルの娘の事だったはず。
あくまで宗教上の、空想の話でしょう?」
「…実はぜーんぶコイツの妄想でした〜、ってなら気が楽なんだけど。
現実は意外と小説より奇異に満ちてるみたいだぁね」
足元に落ちていたオプトのメイン記憶部をゲシっと蹴り飛ばし、案外痛かったのか顔をしかめながら彼は苦笑。
「空想などではなく、実際に存在している、と?」
「それはどうだろうな?俺にもそのあたりは分からないんでね」
「…そういう事にしておくわ」
そう言って、ケイも苦笑を浮かべる。
「さて、そろそろ行かないとやばいんじゃない?」
「おっと、忘れるところだった。そんじゃ、行きますか。
……リューカー!!」
精神集中とコマンド入力。そしてそれに呼応して現れる光のサークル。
一瞬のうちに異なる場所を繋ぐ光の道が現れ、その光は3人を包むとそこから掻き消えた。
その一瞬、ソーマは強く願っていた。戯れなく一身に、自らのすべてをかけて願っていたのだ。
(アムちゃん…こっちだよ、感じ取ってくれ…俺の波動を…っ!!)
アムは、強く願った。
安全な場所へ。
皆が助かる場所へと繋がる道を!
何よりも…今この瞬間も自分を想ってくれている人のもとへ!
「!」
闇の中に浮かぶ、一本の光の道。
雨雲の切れ間から降り注ぐ日の光のように、それは唐突に開いていく。
「見えた…ソーマさんの光!
これなら…届く!…ううん、命に代えてでも届かせてみせるっ!!」
背後から、アルディスの声が聞こえる。
その、温もりとともに。
(アムさん、この先です!私に出来ることはここまで…私は元の「器」に戻ります。
エミーナの事、お願いします。…助けてあげてくださいね)
ひとつ、頷く。
そして彼女は闇の中、一際高らかに叫ぶ!
「「光の道よ、我を…私たちを導けェッ!!リューカーーッッッ!!!」」
トランス状態で叫ぶアムとアルディスの身体から、光の輪が広がる。
それに呼応したかのようにアヤ、ウィル、シスカのマグが反応した。
光の輪を増幅するかのように、マグから光の波が現れて次第に強くなっていく。
やがて爆発的に広がり、急速に収束したその後には…5人の姿は掻き消えていた。
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