最終夜...「ひとりはみんなのために」
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『……データの移送はこちらでも確認した。プラントは完全破壊できたのだな?』

小刻みな振動が続く小さなキャビンの中。
モニタの中の、汎用ディスプレイにもなるサングラスのような眼鏡を掛けた研究員らしき者に向かって彼女は緊張した面もちで報告を続けていた。

「肯定です。
 内部ジェネレータを意図的に超加負荷運転し、丁度10分後に崩壊を示す衝撃波が関知されております。
 小型核弾頭並の衝撃波でしたので、まず間違いございません」
『ハンターズが独自行動していたと連絡が入っているがそちらの方はどうか?』
「内部にエレクトリックジャマーが高濃度で散布されております。
 例え転移テクニックを使用できる者が居るとしても、あの濃度では大幅に移動距離に狂いが生じます。
 間違いなく巻き込んだ物と判断します」

納得したように、一つ頷く研究員。
彼女はふぅ、と溜息をつく。

『…君は良くやってくれた。"後は我々が処理する"。ゆっくり休んでくれたまえ』
「え、あの……」

強制的に切断される回線。
次の瞬間、彼女の乗った小型ヘリは大きな振動と共に火に包まれ、数瞬後爆散した。

「……時間だ」
「大丈夫でしょうか、皆さん……」

合流地点の傍らで焚き火を起こし、シンデンの身体に傷ついた身を預けていたイー・フリーナは、ふと空を見上げてぽつりと呟いた。

「大丈夫だ。
 皆、見掛け以上にタフと見た。おいそれとくたばるような輩達ではない」

シンデンが言った途端に、近くの茂みに光の柱が立ち上る。

「ほら、な」

イー・フリーナを見て、にやりと笑うシンデン。

「座標誤差±0.0001以下か。流石だなソーマ」
「実力はあるのにな……頭の中いっつもピンクだからな、こいつ」
「ほっとけ!今は違わい!」
「ほほぅ、そりゃ珍しい」
「…今はアムちゃんの事しか頭にないっっ!!」
「同じだそれはぁ!!」

シンデンとイー・フリーナの姿にほっとしたシーガルが笑いながら茶化し、それに憤慨するソーマ。
いつも通りの光景が再現される辺り、さすがあのウィルの弟子のようである。

「……それで、ウィル達は?」

ため息をついたケイの一言に、周囲を見回す一同。
朝焼けを迎え、山火事のように真っ赤に染まった森。
しかし、目的の姿は一向に姿を見せなかった。

 


 
 

最終夜...「ひとりはみんなのために」
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