最終夜...「ひとりはみんなのために」
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『シンデン、聞こえるか?』

シンデンの腕に搭載されている端末から、突然コンタクト音と共に通信が立ち上がる。

「兄者?!生きていたのか!どうしてすぐ連絡をくれない?!」
『馬鹿者、連絡できるならすぐそうしている!
 …ウィル達はリューカーで脱出したが現在地不明。もう一つ悪いニュースがある』

雑音混じりのライデンの声は、事態が相当に逼迫していることを示す物だった。

『…南西5km程に未確認の大型ヘリ3機編隊を確認した。IFF(敵味方判別信号)応答も無し、だ。
 画像を送る、イフィに機種の特定を早急に願いたい』

ライデンから送信されたデータを受信したイー・フリーナの表情が一瞬険しくなる。

「……特定完了。兵員輸送用の大型ヘリ、UHr−169"スレイプニール"です。
 機体下部に兵員パックを確認、強襲型かと思われます…と、いうことは?!」
『……あぁ、軍部がここまで迅速に動くとは考えにくい。十中八九、ブラックペーパーのデリートチームだろう。
 奴等、我々を逃がすつもりはないようだな』

いつもどおりの淡々とした口調のライデン。しかし、その声が微かに上擦っているのをケイは感じ取っていた。

「とにかく、ウィル兄達に合流しないと…」
『この辺りはまだエレクトリック・ジャマーの影響下だ、特定は難しい。が、確認が取れ次第連絡する』

一方的に通信を切ったライデンの様子に、皆は心配の色を隠せなかった。

「全員いるか?」
「大丈夫だよ、ウィル兄!」

気を失ったエミーナを背中に担いだシスカと、足下のおぼつかないアムに肩を貸したアヤが大きくサムズアップする。
とりあえず無事な皆の姿に、ウィルはようやく微笑みらしきものをその顔に浮かべた。

「本当にありがとう、3人とも」
「何度も言うようですけど、お互い様ですよ。こういう時は」
「そうそう。助けたかったから、助けたんだし」
「私も…良い経験になったよ、ウィル兄」

一仕事終えた、という清々しい笑みを浮かべる若いハンターズ3人。
それをまぶしそうにウィルは見る。

「最高のパーティだよ、お前さん達は」
「えへへっw」
「あはっ、ありがと♪」
「嬉しい…」

三者三様の喜びように、彼は苦笑しようとして……

「みんな、伏せろ!!」

大声で怒鳴り、その場に伏せた。

「?!っ」

そこはハンターズ、理由が分からないなりに身体をその場に投げ出す3人。
今まで彼女たちの頭があったところを、ヒュっと空気を切り裂く音と共に銃弾が通り抜けていく。

「なっ?!」
「く、執念深い連中だ、全く!!」
「まさか、残存部隊?」
「いや、それはない。あれだけの爆発だ、建物自体原形を留めちゃいないさ。
 おそらくは、軍部もしくはブラックペーパーのデリートチーム……。
 秘密を知ってしまった俺達が生き残ってると困るんだろうな……」
「そんな……!」
「だが…俺らもこんな所で死ぬつもりはない。すまんがもう一働きして貰うぞ、みんな!」
「「「おぅっ!!」」」

完全に気を失っているエミーナを庇うように座り込んでいるアムを中心として、ウィル、アヤ、シスカが円形に陣取る。

「ライデン達が追いつくまで保てばいい。それまで、頑張るんだ!!」
「おっけぇ!」
「任せといて!」
「了解!」

対して、彼らを仕留めんとするのはハンタータイプとレンジャータイプ混合のキャスト部隊。
4人の実力を見て取ったか、木の物陰に隠れながらじりっ、じりっと慎重に近寄ってくる。

 


 
 

最終夜...「ひとりはみんなのために」
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