最終夜...「ひとりはみんなのために」
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やがて、彼らは一斉に木陰から飛び出してきた。 「だっしゃあぁっ!!」 妙な気合いと共にドラゴンスレイヤーで敵を一刀両断に切り捨てるウィル。 「せぇぃぁぁああっ!!!」 こちらは鋭い居合。 「皆に一本たりとも手出しはさせないからね!!」 左手にヤスミノコフ9000M、右肩にはフォトンランチャーを担ぎ上げて、ほとんどランボーの如き怒濤の勢いで撃ちまくるシスカ。 「わたしだって、荷物になるわけにはっ……!」 アムは残り少ない精神力をかき集めてシフタとデバンドを発動させる。 「アム!?」 ウィルの心配そうな声に、テクニックをメインに切り替えて周囲への威嚇攻撃を実行していたアヤが怒鳴る。 「やっば、こんな時に?!敵に増援!」 言った途端にシスカの手元でロック音。 「くっ……このぉっ!!!」 腰のマウントに9000Mを戻し、故障したフォトンランチャーを敵に投げつけ気合いでもう1機仕留めたシスカは、背中のハードポイントから黄色のフォトンの光を宿したパルチザン――"グングニルシリーズ"と名付けられた高LV者向けの長刀――を滑らかな光の軌跡を描かせて引き抜いた。 「手出しさせないって、言ったでしょう!」 不用意に近づいてきたヒューキャストタイプを、一撃の下に切り伏せるシスカ。 「この間のウィル兄の講義が役に立ったよ!」 アヤの手元に出現したのは、一見何かの生物を思わせる有機的なデザインの長刀―ガエボルグ。 「誰にも、私達の邪魔はさせません!!行きますっ!!」 前方に展開していたレイキャストタイプの一団を、アヤのガエボルグの刃が捉えた。 「相変わらずアヤって器用だよねぇ。どうやったらそんなこと出来るのかな…?」 2人の物言いに苦笑したウィルは、エミーナの手元に落ちている鎌を取る。 「…エミーナ……君を過去には潰させない。 手に取ると、程良い重さと共に刀部分がうっすらと紫に光る。 『ク…フフ…ヨリシロに成ル事…を自ラ望んデ来タカ…、男ヨ…』 鎌の声が「聴こえた」のか、シスカが気味悪そうにウィルの持つ鎌を見上げる。 「いや。正確にはこの鎌は、ヨリシロの元になるものなんだろう。 相変わらずガエボルグを無駄のない動きで縦横無尽に振り回しながらアヤが問うた。 「……だろうな。だからこいつが満足するまで使ってやればいい。それこそ、壊れる位にね!」 ウィルに隙が出来たと思ったか、比較的動きの早いヒューキャストタイプが3機近寄ってきた。 「丁度いい、刀の錆ならぬ、鎌の錆になって貰おう!どりゃぁっ!!」 ザシュンッ!! 一撃の元に切り伏せられ、霧状に消えるヒュ―キャストタイプ。 シスカが緊迫した声を挙げる。 「何っ?!」 次に降下してきた黒ずくめのキャスト達は先行したチームから交戦データをサーチしていたらしい。 「おいおい、こんだけこの惑星の生態系破壊しといて、まだ足りないなのかよ?!」 ウィルやアヤが文句を言っても当然聞いてくれるはずも無く、壊れたシャワーの如く雨あられと大口径のフォトン弾は無慈悲に彼らの頭上へと降り注ぎ、遮蔽物としていた樹木やら、岩やらはあっという間に削られていく。 「…くっ! 言って、シスカはヴァリスタを遮蔽物から撃って応戦するが、10倍になって帰ってくる弾丸。 「ウィル兄!まずいよ、アム姉のところに敵が!!」 シスカの報告に、ウィルの表情が歪む。 「ちっくしょ、人質を取るたぁ最近のアンドロイドも随分狡賢くなったもんだな!!」 …いや、待てよ。 「アヤ、シスカ。俺が捕まってもし人質なんぞになったら…俺の事は無視してくれていい。 にっ、と笑みを浮かべるウィル。 「…死ぬのなら、俺一人で十分だ」
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