最終夜...「ひとりはみんなのために」
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「でぅだぁらあぁぁっ!!急げぇぇぇぇ!!!」
「分かってらぁ!!」

全力で山の斜面を駆け下るソーマとシーガル。
ふと視線を転じてみれば、ケイが軽業師のように木から木へと移り渡っていく。

「遅いわよ、二人とも!」
「「んな事言ったってなぁぁぁぁ?!!!」」
「人間とは思えんな、あの動き…」
「いや、軍の特殊部隊なら、あの位は朝飯前だ」

イー・フリーナを担いだままぼやいたシンデンの言葉に、途中で合流してきたライデンが突っ込みを入れた。
ちなみに彼は足で走っているわけではなく、ローラー駆動で駆け下りている。

「…兄者も出来るのか?」
「…やって出来ないことも無い。だが、肝心の足場がもたなくてな」
「おいおい…」

懸命に周囲のサーチを行ったイー・フリーナの努力が実り、ウィル達の居場所が判明したのが約2分程前。
ただ場所が1.5kmほど離れていた為、こうして全力疾走しているわけである。
しかし、熱帯雨林の部類に入るこの辺りでは走りにくくて仕方がない。どうしても遅れ気味になってしまっていた。

「だぁっ!!ライデンみたくジャンプジェットでもあればなぁ!!」

目前にふさがる倒木を跳び箱の要領で飛び越えながらシーガルがぼやく。

「贅沢を言うな。
 あれは本来脱出用のもので、力任せに飛ばすだけだからな。精密制御など糞食らえという代物だぞ?」
「げぇ、よくそんなんで脱出できたよな、っと!」
「ふ、気合と根性があれば何とかなる!」

足下の馬鹿話に呆れつつ、ケイはひたすら前を目指す。
その時だった。
突然巻き起こる風、音、そして影。上を見上げても何もない。
それはすぐに収まったものの。

「……こんな所に私達以外、誰か来てるのかしら…まさか、ね?」

「っくしゅん!」

大きなくしゃみをしたのはパイロット席に座った、軽くウェーブのかかったブロンドの髪を今はHUD付ヘッドギアに丸め込んだ女性。
機内が薄暗くなっているので良く見えないが、その後ろの席でキャストらしき人影が2人分見える。

「おいおい、大丈夫かよ。
 ここで操作ミスとかで落ちたら洒落にならんぜ、流石に」
「大丈夫よ!この機体、プログラミングしとけばほぼ自動なんだから!」

言ってから、しまったと口を塞ぐが、もう遅い。

「なるほど、奴め…流石にいい腕をしている」
「無駄口は後!そろそろ目的地よ、よろしくね!」

顔を赤らめて前を見つめる女性の言葉に、2人のキャストは苦笑して頷き、奥へと姿を消した。

 


 
 

最終夜...「ひとりはみんなのために」
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