3rdNight
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―数時間後、都市型コロニー"エルグランド"内、マンション"レ・サン・デ・ポエ"―


「酷い有様ね。」

そう言うと、ケイ=ラピェデリーはかつての教え子の部屋であった空間足を踏み入れた。
途中でイエローロープが張っていたがお構い無しに乗り越えようとしたら、見張りの警官が制止するべく駆け寄ってくる。

「ハンターズギルドの者だ。共同捜査の連絡が入っているはずだが?」

ハンターズライセンスカードを掲げると、制止に来た警官がライセンスカードを受け取り、携帯端末のカードスロットに通した。
携帯端末の画面に表示された情報を読み取ると、警官は舌打ちをしながら、ケイにライセンスカードを返して憮然とした表情で引き下がった。
それを確認して現場に入っていくと、顔見知りのハンター―ウィル・ハーヅウェル―が既に現場検証を行っていた。
しゃがんだまま、床の上の何かを見ていたので、ミラーシェードを外しながら話し掛ける。

「久しぶりね、ウィル。…大学から直接来たの?」

そう話し掛けると、スーツの上に白衣と言う表の顔―工学系大学講師―に相応しい出で立ちのウィルが立ち上がり、ケイの方に向く。

「…お久し振りですね、ケイさん。学会の発表会帰りにいきなりギルドから連絡が入ったんで驚きましたよ。」
「で、どう?トラッキングの達人から見た、現状は?」

ケイはタイトスカートの裾を手で押えながらウィルの側にしゃがみこみ、ウィルの指の先に視線を移した。

「警官達に足跡を踏まれまくっていたので断定はし辛いですが…二人分の足跡が確認できました。」
「ふーん。」

そう答えながらも、ケイは僅かに眉を動かしただけだった。

「一人はアンドロイド―おそらく、重量級のヒューキャストタイプ―しかも、かなりの手練と思われますね。
 体重の運び方が泥棒や警官とはまったく違います。」
「もう一人は?」
「おそらく、軍人系―あなたと同じく特殊部隊出身者でしょう―の物が一つ、こちらは、かなりの重量物を担いでいると思われますね。」
「なるほどね。」
そう答えるとケイはウィルに立ち上がるように促し、かつて壁があった所に連れて行った。
イエローテープ越しに見えるコロニーの風景の一点―このマンションと同クラスの高さの雑居ビル―を指さした。

「射撃は多分、あのビルの8~9階辺りのあの小窓―位置からしてトイレ―から撃ち込まれた物よ。それも…」

そこまで言うと、ケイは一度言葉を切り、ウィルの方に向き直った。

「軍が使っている実弾系バズーカ―恐らく、Nug2000バズーカ―、弾頭は対戦車弾頭ではなく汎用榴弾系を2発。…二発目は保険ね。」
「保険?」

ウィルが聞き返す。

「ええ。普通、グレネード等の爆発物は(部屋の広さによるけど)1発じゃ生存率が高いのよ…。」

そこまで言うと、ケイは立ち上がって部屋の中を確認を再開して、とある物を見つけてほくそ笑むと、ウィルを手招きして壁の一部をつつく。

「…ま、あの子も素人じゃないから、ドジは踏んでいないようね。」
「…そうですね。」

ウィルが壁を軽く叩くと壁の一部がゆっくりと開き、(武器こそ置かれていないが)隠し武器棚が表れた。

「結構、そろえていたみたいですね。…いつの間にジャステイス何か使えるようになって、師としてはうれしい所だが…。」
「そうね…。」

そこまで言うと、ケイは一通のプラスティックペーパーをウィルに渡した。

「?」
「ギルドからの命令書よ。今から、"私達であの子を探し出して本部に出頭させろ"との事よ。」
「おやおや、随分とお堅い命令で。」

そう言うと、ウィルはプラスティックペーパを畳んで懐に入れた。

「けど、手掛かりは?」
「一つは彼が請け負った仕事の内容の情報。これは、ギルドがクライアントと交渉中よ。」
「他には?」
「…これ。」

そう言うとケイはティッシュで挟んだブロンドの長髪をウィルに渡した。

「…長いですねぇ。」
「ここにいた警察官達にこんな髪の持ち主はいたかしら?」
「…覚えている限りはいなかったですね。」
「彼は赤毛をプラチナブロンドに染めていたはずよ。」
「…ふ〜ん。彼もついに色気づいたのかな?」
「赤飯でも炊いてあげた方がいいのかしら?」
「ま、関係する人物のものだと思うけど、鑑識に渡すのはよした方がいいみたいですね…」

苦笑しながらウィルはティッシュごと髪の毛を白衣に隠すと、現場を出るようケイを促した。



 


 
 
3rdNight
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