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バーといっても、店があるわけではない。
カウンターと椅子がありグラスがあるならそこはバーだ。
いつもは棚から瓶を取り出し、勝手に適当なカクテルを作って飲んでいる。
だが、今日はバーテンダーもいたらしい。
「いらっしゃいませ。何にしますか?」
「じゃあ、ソルティドッグを1つ」
「了解しました」
フォラータ、僕はほらたさんと呼んでいる。
蒼い髪のキャスト。つまり機械で肉体を構成された種族だ。ほらたさんは人形のような綺麗な顔をしている。
「ほらたさんは泳がないの?」
「塩水はどうしても好きになれないのです。任務中であればしかたありませんが、帰った後のメンテが大変なんですよ」
なるほど。そういえば、前に他のキャストがそんなことを言っていた気がする。
「生体パーツ使ったら?」
「ふふ、あれは確かに便利なんですが、肌を見せたくないこともあります」
生体パーツというのは人間の肉体と変わらない構造のパーツだ。一部分は機械で出来ているが、ほとんどが培養された生体部品で構成されている。
代謝機能が万全なので、こういった状況では重宝するかと思ったが、ほらたさんはどうも嫌らしい。
キャストと一口に言っても人からキャストに人体改造したサイボーグ型と、生まれた時からキャストのアンドロイド型の2種がある。
ほらたさんがどっちなのか聞いたことはないが、どちらでも肌を見せる抵抗が生まれることは想像できた。
気まずい沈黙が場を支配する。
ほらたさんが慣れた手つきでシェイクをしている間に僕はチムルを見渡してみた。
続々とチーム員が集結している。
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