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ふと、気づく。微量の違和感。
朝焼けで明るくなったチームルーム。逆光で人影が見え隠れする。
……? なにかがおかしい。誰かが足りない。
「ねえ、アグさん。誰か足りない気がしない?」
「んー、ヨシオじゃないの? ショップエリア1階にカジノが新設されるって噂きいたことない? アイツそこに設置されるスロットマシンのテスターやってるみたいだよ」
パチンカスか。
ヨシオさんは僕ら(仮)のチームマスターだ。
どこをどう鍛えたのか、男性陣の中で最もいい体をしている黒髪ツンツンメガネのヒューマン。よく着ぐるみを着用している。
皆からはボスと呼ばれてるが、ボスっぽくない。おそらくバカっぽい挨拶とノリのせいだろう。
独自のポリシーがあるのか、マスターでありながらチームをまとめる行為をあまりしない。
実際、こんなツッコミ不在のチームをまとめるのは不可能なのだから、彼の方針は正しい。
「赤部屋の横の工事はカジノだったのか。でも、ヨシオさんじゃないな。ボスがいないことなんてしょっちゅうだろ?」
「そうですね。では、いつもいる人がいない?」
ほらたさんが首を傾げた。(仮)のメンバーは全部で50人。
しかし、いつも集会にくるメンバーとなると限られてくる。
副業で物書きをしているミノリさんは今繁忙期だし、ノラさんやレオさんなどたまにひょっこり顔を出すメンツもいるが、最近見てはいない。
ましてや昨今はアークスの活動が減少している。
なら、いつもいる人がいないのではなく、いた人がいないんじゃないか?
…………………。
あっ。
そういえば枯葉さんはどこにいったのだろう?
確か走って海にざぶーんと行ってしまったのだった。
思い出していたところで、こちらに一人の女性がやってくる。
珍しい。煮さんだ。藤色の髪をショートカットにしている。
本当は煮ではなくシャオと読むよく似たカン=ジを使う。だから、呼び方はニ=サンではなくシャオ=サン。
煮さんはきょろきょろとチムルを見渡していた。
「ねえねえ、マイをどっかで見なかった? どこにもいないんだけど」
マイとは枯葉さんのことだ。
かつて煮さんに聞いたところでは、枯葉さんが別の宇宙にいたころの前世ネームがマイなんだそうな。
何を言っているんだかよくわからないが、そういうこともあるだろう。宇宙は広い。
だが今重要なことは枯葉さんの呼び方の問題じゃない。
枯葉さんが行方不明になっていることだった。
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