ファイル1:再起動/リブート
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「やりやすい方法でやればいいと思うよ」 「それより、あたいこさんのいる海底までどうやっていけばいいんかしらね」 こーきさん、湊さん、チャコさんの(仮)でまとめ役になりやすい3人がコテージで話し合っている。
「多いねぇ。そんな人数で作戦行動したことないよ」 チーム最強の一角、りあこさんがカタナを腰に差しながらつぶやき、エミナさんが少し不安そうに同意する。 通常、アークスはパーティと呼ばれる最大4人の小隊を組み作戦行動を行う。 だが26人の連携作戦なんて今までにやったこともなかった。 ダークファルス級の敵と戦う際はアークスの総力を賭けた作戦になるが、その場合は本部の全面的なバックアップが行われる。 「正直、海底とはいえ大隊行動するほどじゃないと思うけどなぁ。12人選べばいいんじゃない?」 「いや、むしろチームルームが安全と判断したはずのエリア内に未踏の海底探査区域があるってのが問題だよ。なにがあるかわかったものじゃないし。人数は多いに越したことは無いと思う」 りあこさんのある意味当然の意見に反対したのはぴさんだった。 なお、ぴさんはそんなことを言いながら、もみじさんたちとダンスをしている。 (仮)では暇さえあればこれをやっている。別に訓練のつもりではなく、娯楽として。 りあこさんやエミナさんも話をしながらいつの間にかダンスに加わっている。きっとパーティを組むときはダンスメンバーから埋まっていくだろう。
「でもぉ、マイがぁ〜」 「煮さん、あたいこさんなら無事だって。そんなに心配ならWisで話してればいいじゃん」 「マイのことだからピンチでも顔に出さないよ!」 体育座りでうずくまっている煮さんを励ましているのはろんちゃんとシャニさん。 「ウォオオォオアアアアー! 待ってろマイー!!」 「やれやれだぜ……」 「よかったねぇ」 シャニさんとろんちゃんも顔を見合わせ、追いかけていった。 一方、チムルの中央フロアではみしゃさんとベルさんが頭を悩ませていた。 「一旦、クラスを換装してきても大丈夫ですかね……?」 「みしゃの換装って、クラスカウンターに行かないとできないんだっけ? 今テレポーターや倉庫、ビジフォンを使うのはまずいと思う。あーいうの使うと色々と脳から吸出し受けるって噂聞いたし」 「そういえば、そんな都市伝説あったっけ……」 「どうせ後でバレるだろうけど、今バレたら下手するとあたいこさんの救出が本部から差し止め受けるかもしれないよ」 「うーん、それはないと……思いたいんだけどなぁ……」 換装型キャスト:みしゃさんの表情は意外ところころ変わり、今はタハハ……といった風情の苦笑いをしていた。 そうなのだ。今の僕たちは何より本部を信用していない。 そして僕はと言えば、まったく個人的な理由で途方に暮れていた。 インターフェイス>メインメニュー展開。 バウンサー/レベル1。 いまだ見慣れないクラス名。意味合いは用心棒、ではなく、『跳躍する者』。 武装を確認する。 ユニット、つまり防具はキングスシリーズ一式。
ラボで対応したのはモニカという新人店員だった。 武器の強化はそのレアリティに準じて難易度が変わる。 「が、が、がんばりますぅ……」「はわわ、ごめんなさいぃ……」「なんとお詫びしていいかぁ……」 ダメだ。腹パンしたい。
ともかくも、このブーツは一応使用可能と言える。 「やってみるか」 いきなりの実践だが、口に出して覚悟を固める。 「どうしたんだ、ごろーちゃん? その足にあるのユニットじゃないんだな!」 いつの間にか横にオタさんが来ていた。今日はやたらそういうことが多い。 「ああ、昨日新クラス:バウンサーの、というかその固有武器:ジェットブーツの先行テスターに選ばれたんだ。こいつはそのジェットブーツ」 「なるほど。Boってのがバウンサーか」 細かいステータスは不可能だが、クラスや武装程度なら他のアークスからも認識することができる。 「レベル1なんだ。みんなの足を引っ張りそうで」 「ま、人数あんだけいるし大丈夫さ。いいレベルアップになると思うぜ。それに、レスタやザンバースしてくれるだけでもありがたいんやで」 「ザンバースか……。たしかに下手な火力でテク撃つよりか良さそうだ」 風属性テクニック:ザンバースは術者の周囲にフィールドを展開する。 うん、決めた。とりあえず、さわりだけ動きを確認しつつ他人の補助をしながら立ち回ろう。 「じゃあ、オタさん。すまないけど寄生させてくれ。補助はやるから」 「おう、いいぜ。よろしくな!」
当たり前だが僕も(仮)なのだ。
いつの間にか26人全員が同じダンスを踊っていた。これほどの人数ともなるとステップを踏むたびにザッ!ザッ!という大音響となる。 妙な一体感を感じる。気分は昂揚し、全員の気持ちが一つになっていく。 枯葉さんを心配する気持ちはもちろん全員にあったが、未知の26人大規模作戦を楽しもうという気持ちも全員にあった。
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