ファイル1:再起動/リブート
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「まったく! 心配して来てみればなんたることか! 仮にもチームリーダーが婦女子にセクハラなど!」 (ウルクちゃんマジでド偉い人だったかー……) 目の前で自分を説教しているのはレギアスである。 ラッピースーツは高性能パワードスーツ。触覚も嗅覚も味覚もすべてそのまま着用者に伝えられる。 「う、ウルクから離れろぉー!」「ちょっ!テオ!?」「ウルク!君には分からないかもしれないけど、そのスーツは五感を正確に伝えるんだ!」「へっ!?」 以後はてんやわんやの大騒ぎである。 「あー、もういいです。レギアスさん。二人とも反省しているみたいだし」 「ヌ……。お主がそういうのであれば、よかろう」 苦笑するウルクに宥められたレギアスの、二度とするなよ、というキャスト・アイの視線を感じながらヨシオは相好を崩す。 「へへ、分かってるって。ウルクちゃんが超偉い人っていうのはよーく分かった。……で、さっき俺がハグする前に言っていたプロジェクト・リブートって何なの?」 ヨシオは他の(仮)メンバーほど本部を毛嫌いしているわけではない。 そして、その浄化作用の源が目の前のウルクだということをすでに直感で感じ取っていた。 「うん、この間の事件でアークスたちの士気が目に見えて低下したでしょ? それは、彼らが上層部の言いように利用されている!って感じているのが原因だと思う」 レギアスが俯いた。目に見えて沈んでいる。不本意とはいえ、事件の片棒を担いだ責があるのだろう。 「おう、うちのメンバーもそんな感じだったわ。でもよ、ウルクちゃんはそこをどう払拭するつもりなんすか?」 「話そうと思うの。皆に真実を洗いざらい話して、信じてもらう。そして二度とこんなことがないようにする!」 ヨシオはぽかーんとしてウルクを見つめた。それは彼女の年相応に若い意見であり、途方もない危険をはらんでいるものだ。 「それからもう一つ! これからのアークスがどういう存在になるべきなのか皆に考えてほしいの。つまりアークスとはなんぞや〜?っていうのを再定義したい!」 それがプロジェクト・リブートなのだ。と大きな胸を張って宣言をするウルク。 アークスとはアークスである。 「あー、ウルクちゃん、わかった。あんたの理想と思想がとても純粋なことがよくわかったぜ。でもよ、俺は真実ってのを知らない。だから答えなんて出せない」 そう無難な答えを出す。(仮)のメンバーが物凄いモノに組み込まれそうな気がして怖かったからかもしれない。決定を先延ばしにしようと試みる。 「わかってる! だから、まずヨシオさんにも聞いてほしい。今までのアークスが何だったのかを。ルーサーのことを」 そんな真実聞きたくねえ!と答えることは簡単だった。 気づけばヨシオはウルクの話に耳を傾けていた。
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