ファイル1:再起動/リブート
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気づけば、僕はその扉の前で立ったまま気を失っていた。オタさんに肩をつかまれて揺さぶられている。 「あ、起きたか……。どうしたんだよ、パニックにでもなったのか? もう戦闘は終了したぜ?」 パニックというのは自律神経に一時的な障害を与える状態異常のことだ。 セルフチェック。 だが、被害はあった。 ベレイを格納し、別のマグを取り出す。 「もう大丈夫だ。すまない、なにかに吸い寄せられたみたいだ」 扉の奥を見ながら言う。長い回廊が奥へと続いているようだ。 「ごろーちゃん、大丈夫ですか!?」 枯葉さんが心配そうに言う。枯葉さんはそこらの海水で洗ったのか、もうオイルまみれにはなっていない。 「大丈夫だって、みんな戦闘は終わったのかい?」 言いながら周囲を確認する。 「ああ、なんとか終わったぜ。あとはどうやってここから出るかだ」 こーきさんが天井を見上げながら言った。揺蕩う水面が空中にある。 「うー、本当にご迷惑をおかけして、なんとお詫びしたらいいのやら……」 「カレやん、今度から気を付ければいいんだよ」 「そうだよマイ! それにこんな場所見つけるなんてお手柄だよ!」 「そうね。チムルの近くにこんなのあったなんて気づかないとまずそうだし」 エミナさんたちが枯葉さんを励ます。本人はまだ気にしているかもしれないけれど、この分ならすぐに元気になるはずだ。 今の問題はこーきさんの言う通り脱出方法だった。出来るだけのことを試してみるほかない。 「とりあえず、この神殿の中を見てみよう。ひょっとしたら方法が見つかるかもしれない」 「ここが海の上まで浮上したりとか? 可能性はあるんじゃねーの?」 チャコさんの推測はあながち外れていない気がする。 「こうしてるとまるで冒険者みたいだな!」 「ファンタジーのRPGみたいじゃの」 回廊を歩きながら、オタさんとつくねがはしゃいでいる。 「大きな部屋に出るぞ。なにかがある! ……なんだあれは……?」 上様が注意を促す。
赤虎のつぶやきに、皆が同意する。 そうだ。僕もどこかで見たことがある。 そして、僕らはそれにアクセス可能なことを知っていた。 「……どうする? アクセスしちゃう?」 恐る恐るエミナさんが言った。不思議と、危険はないと直感している。 「したい人がアクセスするでいいんじゃない?」 チャコさんがそう言って真っ先にアクセスを行う。 僕もまた、それに触れた。
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