ファイル2:複製/コピー
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ベレイのサーキット内を走るルーサーはこれまで幾度もリバーに対するアクセスを試みていた。 あの扉に触った時点とは感触が変わっているのだ。 隔壁で精神を防護されているのではない。 そう、シオンを理解できないのと同じように、精神に触れることができないのだった。 自分がマグに移動したからではない。 理由は二つあり、どちらも明解である。 しかし、前者はリスクを冒して挑戦すべきだったのかもしれず、後者はこの宿主にアクセスできなければ無意味に終わることだった。 (まさか、この僕が解を間違えたというのか?) そもそも何故アクセスが不可能になったのか、ルーサーは思考を走らせる。 (そうか、モノリスだ。この男はあれにアクセスしたのか。ああ、シオン。君はなんてことをしてくれたんだ) このルーサーは知らない。すでにシオンが死していることを知らない。 かつてはモノリスを複製・解析しシオンを理解しようとしていた。 不運極まりない敗者は、次の想定を行う。 (この男は自分のマグが死んだモノだと思っている。同時に自分の部屋にでも飾るつもりなのだろう。交友関係は広いようだ。他の人間がいるかもしれない) 退屈を嫌うルーサーだが、これまで浮上施設に隔離されてきた年月を思えば辛抱のしようもある。
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