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ファイル2:複製/コピー








(おのれ! なぜアクセスできない!?)

ベレイのサーキット内を走るルーサーはこれまで幾度もリバーに対するアクセスを試みていた。
そもそも格納状態から展開されてすぐにアクセスをしたのだ。
だがベレイの宿主であるアークスには通用しなくなっている。

あの扉に触った時点とは感触が変わっているのだ。

隔壁で精神を防護されているのではない。
まるで理解の及ばないものに触れているかのような感覚。

そう、シオンを理解できないのと同じように、精神に触れることができないのだった。

自分がマグに移動したからではない。
それはすぐに証明できた。
あのみづき、と呼ばれるアークスにはアクセスの余地があったからだ。
最初はあの女でもいいかと思ったが思いとどまった。

理由は二つあり、どちらも明解である。
一つ、彼女が装備しているマグが魔改造されており、このベレイよりよほど手強く見えたため。
一つ、このリバーというニューマン男性が元の自身の体格とさほど変わらなかったため。

しかし、前者はリスクを冒して挑戦すべきだったのかもしれず、後者はこの宿主にアクセスできなければ無意味に終わることだった。

(まさか、この僕が解を間違えたというのか?)

そもそも何故アクセスが不可能になったのか、ルーサーは思考を走らせる。
あの神殿に、自身が隠していたものを思い出すまで時間はかからなかった。

(そうか、モノリスだ。この男はあれにアクセスしたのか。ああ、シオン。君はなんてことをしてくれたんだ)

このルーサーは知らない。すでにシオンが死していることを知らない。

かつてはモノリスを複製・解析しシオンを理解しようとしていた。
だが、モノリスは頑なにルーサーとルーサーの息のかかった者のアクセスを拒んでいた。
しかし、シオンが死んだ後であれば、誰であれモノリスに容易くアクセス可能になっていたのだ。
それもこのルーサーは知らなかった。

不運極まりない敗者は、次の想定を行う。

(この男は自分のマグが死んだモノだと思っている。同時に自分の部屋にでも飾るつもりなのだろう。交友関係は広いようだ。他の人間がいるかもしれない)

退屈を嫌うルーサーだが、これまで浮上施設に隔離されてきた年月を思えば辛抱のしようもある。
今は伏して時を待つことにした。

 

 

 

 

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