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身体を揺れ動かされる。薄く目を開けると、そこに小さな女型キャストがいた。 名前をドロナ。僕のサポートパートナーである。 サポートパートナーはアークスを支援するために設計されたアンドロイドだ。 「ああ、すまない。寝落ちしてしまったようだ。おはよう」 「マスターがプレミアムサービスに加入されたので、パートナーコンソールに戻ってきたのです。ミニルームの時もコンソール設置してくださいよ」 サポートパートナーをマイル―ムに入れるためには、専用のコンソールを予め設置している必要がある。 しかし、僕がプレミアムサービスを必要としていない時は忙しくない時なので、彼女たちの力は必要がない。 「というわけで、ミニルームの時はお前たちは休暇だ。ダリアとマリネは?」 「ダリアは隣室で各クラフトシステムのチェック中。マリネなら朝食を作っています。モーニングはオムレツとクロワッサンでよろしいですか?」 「コーヒーは……」 「砂糖2つとミルク一杯ですね。承知しております。……ところで一つ質問してもいいでしょうか?」 ドロナは僕の左肩の辺りを見ていった。当然だが、そこにはあるべきはずのマグがいない。 「マグをキャビネットに仕舞うとか、マスターはアルコールでも摂取していたのですか?」 「いや、ショッキングなことを言うようだが、よく聞いてくれ。……あいつは、ベレイは死んでしまったんだ」 「……マスター。それはないと思いますが」 「信じたくない気持ちは分かる。お前たちも可愛がっていたしな……」 「いえ、キャビネット内で昨日の夜にう」 「マスター! 朝食の時間だよ!!」 ドロナの声を遮って、マリネがトレイをもってやってくる。 「いただこう。すまないがダリアも呼んできてくれ。オーダーを頼みたい」 「承知いたしました」 コポコポとコーヒーを注いでくれたドロナが隣室へ向かう。 まずは、とろっと蕩けるオムレツから。 「へへー! マスター美味しい?」 「うん、これイケるな」 次はクロワッサンに手を付ける。パリパリとした皮を開くと中はしっとりとしていて柔らかく、微かにバターの香りがした。 「何だマスター? アタシに用があるのか?」 ぶっきらぼうな口調で話す褐色の女。僕の三人目のサポートパートナー:ダリアだ。 「ダリアだけじゃなくて、皆に話があるんだ」 サポートパートナーたちが顔を見合わせて露骨に嫌な顔をする。 「もしかして、採集ですか?」 「もしかしなくても採集だ。君たちの休暇はもう終わり。フランカさんの食材やデイリーオーダーの指定物をかき集めてもらおう。朝から晩までフル稼働で」 「おっ、鬼! 悪魔! ブラック! あんなに美味しいごはんつくってあげたのに恩知らず!」 「やれやれ、仕方ないな……いっちょやってやるか」 無言でライフルを用意するドロナ。三者三様の対応。 「各員、今から送信するリストのモノを採集してきてくれ。定時になったら帰還、報告すること。以上」 「了解」「わかったよう……」「いってくる!」 コンソールを通して任務をしにいくパートナーズを見送る。 いつの間にか自分の胃に消えていた朝食を片付けた後、昨日みづきさんから預かった仕事をする。
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