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イベントクロニクルの編集作業は順調に進んだ。
いいんちょうがいる部分の透過処理とそこにイベントクロニクル閲覧者を投影するプログラムに時間を取られた程度。

あまりに凝り過ぎて映画のようになってしまった部分もある。
もちろん、僕はこんな仕事をするのは初めてなのでただの悪ノリに過ぎない。
絵コンテくらい切ればよかったかもしれないと後悔したが、とりあえずは見れればよいのだと開き直る。

時系列順に処理をしていったために、第二章終盤になる頃にはとっぷりと夜になっていた。

その間、幾度もパートナーズがコンソールに現れては倉庫に食材やら結晶やらを仕舞っていく。
その度に間髪入れずに新しいオーダーを突きつけるのも僕の仕事だった。
ただ、マリネには昼食と夕食も作ってもらった。
昼はキーマカレー。夜はカレーの余りを使ってドリアにしたようだ。
ドリアの上に「ブラック」とアークス文字でわざわざ書いてくれているのが印象的である。


「長いな……」

愚痴が口をついてでたのは第二章のクライマックス部分だ。
7/7のイベントが恐ろしく長いのである。
絶対令が起こって、オーザやマールーたちと争い、六芒均衡同士で争い、テオドールと戦い……。

しかしそう悪いばかりでもない。
今アークスのトラウマとなりつつある絶対令の場面も、こうして第三者視点で見ると冷静に状況が分かる。
もしかしたら、プロジェクト・リブートの方でもこのイベントクロニクルが有効に働くかもしれない。

そうこう考えているうちに、編集部分はルーサーがシオンに振られる場面になっていた。

「ルーサーってストーカーみたいだなぁ……。そりゃ振られても仕方ないな」

――突然。

ガシャン! という音が響く。驚いて後ろを振り返れば、キャビネットから音が漏れたようだ。
もちろん、マグはそこにあり、微動だにしていない。

「……気のせいか」

編集を続行する。場面はルーサーがダークファルスに変化する場面になった。

ガシャン!

振り返った。

「風かな?」

風などあるはずもない。ここには扇風機もエアコンもないのだ。キャビネットの中には微動だにしないマグがあるのみだった。
もしかしたらパートナーズの誰かが帰ってきたのだろうか、と思い見渡してみるがやはり誰もいない。

「ま、いいか」

作業を再開する。
場面はさらに移り変わり、ダークファルスとなったルーサーがレギアスに殺され、双子に食われる場面になった。

『そうだ。真似っこしてあげようよ。増やしてあそぼうよ』

『そうだね。真似っこしてあげよう。増やしてあそぼうか』

ルーサーが増殖し、素手で六芒均衡と渡り合う。

「遺体すら弄ばれるとか……。自業自得とはいえかわいそうな奴だなぁ」

ガシャン! またキャビネット内で音がした。振り返ればそこには中で暴れまわるベレイの姿がある。
プルプルと震え、あるいは回転し、その興奮を伝えていた。

「べ、べレイ? お前、生きて――」

「酷い! 酷過ぎる! こんな仕打ちはあんまりだァ!」

僕のベレイがルーサーの声でしゃべっていた。

 

 

 

 

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