ファイル2:複製/コピー
|
あの後、僕はキャビネットにベレイを突っ込んだままみづきさんのところに行き、さらに入念な検査をしてもらった。 ベレイは死んだが、代わりにルーサーの精神体が中に入っていること。 つまり、僕が装備していればこいつはただうるさいだけで何もできないということだった。 3日目はほぼその検査に費やされ、ついでに名前をどうするかで一悶着があった。 「ゼンチ―! ゼンチってかわいくないです!?」 という枯葉さんの声でゼンチになったのだ。 『フ。中々美味だったよ』 僕が記憶の遡行から帰るとゼンチはフランカさんの料理の数々を平らげている。 「ねえ、リバーさん。彼喜んでいるのかしら?」 「ええ、美味だそうで」 「そうなの! それはよかったわ! また今度連れてきてくれない? そういえば彼、名前とかあるのかしら?」 「ゼンチです」 『やめろ!』 『デンタルクリニックのほうが良かったか?』 まさかルーサーとは言えまい。
アークスへの依頼はクライアントオーダーと呼ばれるが、その支払いはメセタとEXPで行われる。
『なぁ君、どこへ行くんだ?』 『まずはクラスカウンターにいってスキルポイントを振り分け。次にナベリウスにでも行ってジェットブーツの練習だ。……どうした?』 『いや、昔僕がいたころと街の雰囲気が違うからね』 それはそうだろう。このルーサーが統治していた時代から大分年月が経過している。 『どこか見たいところでもあるのか? 飯はもう食べたろ?』 『確かに腹は膨れたが脳がすきっ腹だよ。なにか新しく変わったシステムとかないのかい?』 『アークスが第三世代になったり、ACが発行されたり、AISって巨大ロボが出来たりしてる』 『アイス? アイスがロボなのか? 冷たくて美味しいアイスが?』 『ええと、AISは略称で、正式にはなんて言ったかな……』 本当にこいつはあのルーサーなんだろうか? おつむがちょっぴり弱くなってないか? 長い囚人生活で頭がおかしくなった? 「! リバさんがいるよ!?」 「わふぅー。どしたん? こんなところで」 声を掛けてきたのはチルさんとこーきんさんだ。二人ともモノリスには接触していない。 「やぁ、こんにちわ。僕はフランカさんに連れられて試食会してきたんだ。そっちはどうしたの?」 「そいつは災難だったな……。俺たちはさっき偶々会ったんだ。俺は聞き込み調査しててな。チルはなんか変なのに絡まれてた」 「! 値下げ交渉ずっとされてた!」 チルさんは変なのによく絡まれる。 「チルさんは相変わらず大変だね。調査っていうのは?」 「一般市民の側から見て、アークスは今どう見えるかって調査だ」 アークスと一般市民は切り離せない関係にある。アークスは市民を守り、市民はアークスに装備や施設や人員やサービスを提供する。 「そういうのは、チャコさんが得意そうだね」 「いいや? 逆だ、ごろーちゃん。チャコに任せると余計な偏りがでる。こういうのは公平な視点で見ないとな」 「ああ、チャコさんの家、仲いいしねぇ……。で? 結果はどうだったの?」 「早めに対処しないと市街地で暴動が起きてもおかしくないな、こりゃ」 「!? いつ暴動起こるの!?」 「そこまで酷いのかい?」 「そりゃあ、本部への不満を持つアークスがそこら辺にいて、溜まったストレスを街で吐き出されたら堪ったもんじゃないだろ? 市民同士の喧嘩であれば警察機構が動く。だが、アークスがそれに関わっているなら警察機構では止め切れないことが多いために、同じアークスが派遣される。 「……確かに、ひどい状況だね」 「プロジェクト・リブートってのは必要な処置だと痛感したわな。それも出来るだけ早く」
「おっと、ごろーちゃんは?」 「ロビー。ジェットブーツの練習をしに行くつもりなんだ。挙動とかも確かめたいしね」 「ならソロの方がよさそうだぬ。俺はドゥドゥと戦ってくるぜ。チルは……」 「! TA!」 TA:タイムアタックは先輩アークスのクロトから与えられるクライアントオーダーだ。 「クロト銀行、もうすぐ営業形態変えるって聞いたから今のうちに稼がないと!!」 銀行呼ばわりされるほどの個人資産がある時点でやはりおかしい。 「そっか。じゃあ二人の武運を祈ろう。特にこーきさんはドゥドゥに気を付けて」 アークスには、ラスボスはドゥドゥという言葉もあるほどだ。 テレポート。
|