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「なにをしたいのかな?」 尋ねてきたのは係員のビア氏。中年ヒューマン男性。最近髪に白髪が混じっている気がする。 「まずはこれを照合してください」 バウンサー試用被験者としてのIDをホログラム表示する。 「これは珍しい。ということはバウンサーのスキルポイント配分だね。ちょっとまってくれよ」 僕のIDを見て取るやいなやそう言い、即座にまだ試用に過ぎないバウンサーのスキルツリーが僕の網膜に表示される。 「まだスキルデータベースは出来ていないから、ぶっつけ本番になるだろうけど勘弁してくれ」 スキルデータベースというのは有志のアークスが戦闘時のデータを持ち寄って構成されるデータ群だ。 そして、ビア氏は黙った。あとは集中しているアークスに任せる、という意思表示でもある。
『今はじめてツリーを見たんだから、今から決めるさ』 ゼンチからの声。こいつにも網膜上のツリーが見えているんだろうか? 『スキルデータベースに載るような細かいデータなら僕が用意できるとも』 『本当か? 何か企んでるんじゃないだろうな?』 『君のフォトン構成から逆算すれば大体どういうことが潜在的に出来るようになっているか分かるさ。さぁ、僕にアクセスして演算を使いなよ』 『お断りだね。どうせ、より僕を理解できるようになれば自分が自由になれる、とかそういうつもりで言ってるんだろ? 生憎、敗者に憑依されたくはないな』 『フン……詰まらん奴だな君は。物事を穿って見過ぎじゃないかな?』 『ゼンチ、お前って企んでる時、すごい嫌らしい声だしてるよ』 『ぐっ……!』 黙ってくれたのでスキル振りを再開する。 50ポイント分のスキル振りには、10分以上費やした。 『君、非効率的な戦い方が好きなのかい?』 『器用な戦い方が好きっていってくれ』 器用貧乏の間違いじゃないか、というゼンチのツッコミを無視してビア氏に礼を言いカウンターから離れる。 所詮練習なので、クエストカウンターに話しかける必要はない。
この小型船の操縦は完全自動制御だ。 ナベリウスの位置座標は登録済みなので選択するだけで済む。 ナベリウス。 僕がアークスになって最初に降り立った惑星。
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