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キャンプシップ後部のテレプールから落ちると、惑星内の探索可能区域に自動的に転移先が振り分けられる。
転移する前に難易度スーパーハードを選択したので転移先は他に比べて高濃度のフォトンで覆われていることになる。

足元から凍てつくような、あるいは結晶化する感覚と共に、僕は地表に安全に降り立った。
ゼンチが訝しげに話しかけてくる。WISではない。ここには僕ら以外はいないからだ。

「おかしい。アークスは空中に転移して着地するのではなかったか?」

「それはいつの時代だよ。僕が子供のころのイメージPVはそんなだったけどさ。今はちゃんと高度座標もずれないで転移できるようになったの」

遥か天から落下して、森の中を縦横無尽に駆けまわるアークスのPVに子供の僕は憧れたものだ。
そのPVの主役が着ていたコスチューム:クローズクォーターは僕も青色で持っている。

とりあえず、道なりに進む。
ナベリウスの地表には道が出来ている。この道を作ったのはアークスだろうか?
それともこの道を作っているのはウーダン種かもしれない。
腕があって二足歩行できて物を持ち上げることができるのだ。道を作れてもおかしくはない。

そんなことを考えていると、当のウーダン種がやってきた。


戦闘形態へ移行。
ビハインド・ビュー。
正常にキャンプシップとデータリンクし各種データが僕に送られてくる。

レベル64/ウーダン/弱点属性:火

ロゼフロッツ/リヒトが足裏にマウントされ、僕の身体が宙に浮かぶ。
そういえば、ジェットブーツギアを獲得すると以前に使用したテクニックの属性に合わせてブーツの属性も変化するらしい。

「物は試しだ。フォイエ!」

初等火属性テクニックのフォイエ。チャージ/発動。
脚部が炎を纏って火弾を放つ。サッカーボールを鋭くキックしたみたいに見える。

喰らったウーダンは炎を物ともせずにこちらに向かってきた。怒らせてしまったようだ。

「ま、ブーツの属性を変えるためだしな。テクニックで倒してもブーツの練習にはならないし」

「でも君、スタンス使い忘れてるぞ」

迂闊。今までやってきた職歴にはスタンスを使うクラスが無かった。慌ててスタンスを使おうとする。

「おい、前を見なよ。もうお猿さん来てる」

ああ、クソ! エレメンタル・スタンスの起動を中止。PA:モーメントゲイル始動。
深海の敵を怯ませた時と同じく、X字を描く高速の蹴りがウーダンを怯ませる。派生せずに一度距離をとった。

「とりあえず、ありがとなゼンチ」

「君から礼を言われたのは初めてだが、まるで嬉しくない。さっさとあんな猿倒せよ」

スタンス起動、改めてブーツのPAを確認する。
実は浮上施設でブーツPAのディスクを揃えていた。

そのうちの一つを使う。
接近してくるウーダンの動きは意外と速い。ここがSHエリアだからだ。
あまりに高濃度のフォトンは人類以外の生物に昂揚作用を与える。つまりは興奮しているのだ。迷いなく突き進んでくる。

振り下ろされる右爪をステップで回避する。スッテプアドバンス4レベルが効いているからか当然のように爪は宙を切った。
ステップの勢いを殺さずにそのまま回し蹴り、相手の足を刈る。
バランスを崩したところにPA:ストライクガストを叩きこんだ。

初めて使うPA。自分の身体がヨーヨーのように回転してウーダンを蹴り上げていく。
頂点まで飛びきった所で派生:逆回転のスピンが掛かり敵を地面に叩きつけた。
同時に、派生したことによる追加テクニックとしてシフタが発生する。
攻撃ステータスを引き上げる補助テクニックだ。

ウーダンは一連の攻撃を受けて絶命し、その肉体がフォトン化、僕の構成フォトンの一部となった。

「君、今の動きは悪くないんじゃないか? そんな武装初めて見たよ。興味がわいてきた」

「そりゃ、どーも」

実際、悪くない手ごたえだ。いきなり苦戦したようだが、うっかりミスによるものでダメージは皆無。
次はもうひとつのPAを試そう。グランウェイブだ。

獲物を探しに、森の奥へと進んでいく。


 

 

 

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